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店内で福倉さん夫婦

29福倉光幸・智里さん

本連載もいよいよ最終盤。人物編をふたたび金谷へ戻し、前向きな人を紹介しよう。

福倉光幸さん(30)は、鋸山観光案内所「石の舎」で2011年にピザ店を開いた若者である。鹿児島県出身で、縁あって金谷のまちづくりに参加する。耐熱性にすぐれた金谷石を活用しようと、専門店で働いた経験のある福倉さんが、金谷石を使って独自の石釜を築いた。2010年秋のことである。

試行錯誤を続けながら、このドーム型の石釜でピザを焼き、翌2011年の正式開店にこぎつける。東日本大震災の2週間後。日本中が震撼した災害の後だけに、客足が伸びるのは遅かったが、徐々に固定客がつく。房日新聞での紹介後、テレビや雑誌でも取り上げられ、2012年に、客足が爆発的に伸びる。

9月のピザ「ミヨーガ」

経営も軌道に乗り、南房総市出身の妻・智里さん(28)と結婚、金谷港で人前結婚式を挙げた。平日は地元客、週末は東京や近郊の観光客が訪れるようになる。マルガリータ(Mサイズ1200円、Sサイズ900円)などの定番ピザのほか、月替わりの季節のピザも焼く。8月が季節の夏野菜をふんだんに使った「オルトナーラ」、9月は刻みミョウガとツナ、アンチョビで大人の味わいの「ミヨーガ」を出して人気だった。10月はサンマを載せたピザを準備する。いずれも夫婦で考えたメニューで、試作しては自信のあるメニューに育てていく。

ピザを焼く技術も日進月歩である。開店前に構築した1号釜は一辺が1・2bほどのドーム型だったが、燃焼効率を考え、今年6月にひと回り小さな一辺が90aのサイズに変更した。金谷石を厚く盛って熱が逃げないため、使う薪(まき)も半分で済むようになった。

房日新聞が最初に福倉さんを取り上げたのは、2010年10月16日付で、試験的に釜を設けて、鋸山ハイキングの客にふるまう記事を書いている。「石で栄えた金谷を、ふたたび石で活性化させたい」と記事は結ばれる。その青年もいまでは自信満々に、ピザを焼く。それもこれも、周囲の協力と、熱に強い鋸山の石のお陰だろう。

店が軌道に乗ったいま、新しい夢を描く。日替わりで出店者が違う「シェア商店」のオープンである。月曜は和食、火曜は洋食、水曜は中華。金谷の老若男女を巻き込み、空き店舗を活用する。「自分の世代で店を開くのは少ない。もっとこのような輪を広げたい」と福倉さん。

ハート型に焼いた「マルガリータ」

店は鋸山の表玄関にある。多くのハイカーがJR浜金谷駅を降りて、「GONZO」の前を通って山へ登る。それを見守るのが、福倉さん夫婦でもある。

金谷の石を使った店が、金谷の活性化につながり、金谷側の鋸山を見守っていく。若人がまいた種は、大きく花開いた。

★ピザGONZO

住所 富津市金谷3869―2

電話 090―1439―5030

水曜定休

火曜は午後2時ラストオーダー(2時半終了)

【写真説明タテ3段 】店内で福倉さん夫婦=富津

【写真説明ヨコ1段半 上】9月のピザ「ミヨーガ」

【写真説明ヨコ1段半 下】ハート型に焼いた「マルガリータ」

13年9月16日 34,783
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