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7日間歩き通したシューズと杖

【第33回 おわりに】

房州の山に終わりなし

英語のトレッキングの元々の意味は、長く苦しい徒歩旅行のこと。現在では、山歩き全般を指す。一般的な登山が、頂上を目指すのに対し、トレッキングは尾根や沢を歩く。ピークを歩くこともあるが、目的はあくまで山歩きだ。日本ではトレッキングを軽登山と位置づけ、平地のウオーキングや、コース設定されたハイキングとは、区分している。

記者はこれまで、房州低名山のいくつかを登ってきた。他県での登山とは違い、比較的短い距離を歩く。これでは低名山の魅力を100%堪能できない。そこで房総半島南部を南から北に歩く「房州古道を往く」取材で、縦貫コースを歩いてみた。

今度はその横断バージョンである。この分野の先駆者である川崎勝丸さんから誘いがあった。「長い郡界尾根の上をずっと歩けるんです」。にわかには信じられなかったが、事実、川崎さんは何度も歩いている。7日間かかる大トレッキングである。断る理由もなかったので、昨年10月29日から12月10日までの間、都合のつく日を選んで、のべ7日間歩いた。

8人の尾根歩き隊の岩高山ピークでの記念撮影

両端にクルマを置き、登っては下り、下りては登るの繰り返し。

両側断崖のやせ尾根で尻もちをつき、危機一髪となった日。いくつものコブを越え、両脚の関節がきしんだ日。清澄山中で見た夕日は、感動よりも夜の帳に包まれる戦慄であった。内浦湾に出て旅が終わったかと思えば、さらにもう1日、岩高山ルートがあった。

1日平均6時間歩いて、のべ7日間。単純計算で42時間歩いたことになる。ゴールした興津の美浜は、そんな苦しい思いを一掃してくれた。

初日、川崎さんがくれたサカキの杖は、7日間の大トレッキング中、つねに記者と一緒にあった。水戸黄門の杖のように、八面六臂の活躍。シューズは7日間でよれよれになってしまった。

一緒に歩いた「川崎勝丸と尾根歩き隊」。先頭に立ってルートを取った山口一嘉さん、寡黙でもしっかりした足取りの菅野義信さん、人間ブルドーザーこと加藤弘信さん、山中でも博識だった川名正春さん、おいしいドリップコーヒーの平柳常子さん、心優しき山乙女の嶋田桃代さん、そしてリーダーの川崎名人。その7人がゴール地点で、寄せ書きの色紙をくれた。なんという心配り。なんという山仲間。色紙を見て、記者の涙腺も思わず緩む。

山仲間の7人の尾根侍≠ヘ口をそろえた。「連載は終わりますが、山に終わりはありません。また一緒に歩きましょう」。

=おわり=

(この連載は、忍足利彦記者が担当しました)

【写真説明】7日間歩き通したシューズと杖

【写真説明】8人の尾根歩き隊の岩高山ピークでの記念撮影

08年2月12日 46,373
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