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石尊山の二等三角点

[第7回]黄和田畑へ

初日の終わり 迎える煙

石尊山は山頂に巨大な石尊権現のあることで知られる、房総東部の名峰だ。標高は347・6b。二等三角点(点名は「黄和田」)峰である。

その霊験あらたかな峰までには、まだアップダウンがある。最後のひと踏ん張りと、気合を入れ直す。

岩の下りが一行を待ち受ける。川崎さんがザイルを出し、下りをサポートしてくれる。本日、最大の難所である。

安全に下り終えると、その先が黄和田畑への分岐となる。国道465号への看板も出る。石尊山周辺は看板が良く整備されていて、ここまで来れば迷うこともない。が、朝9時から歩いているのだ。疲労困ぱいである。

黄和田畑への分岐を過ぎると、トンネル上に出る。この尾根を過ぎると、山頂手前の広い杉林になる。日光の余り入らない半日陰に、ハナミョウガが生えている。一行は広い杉林の中をだらだらと登っていく。

やがて大きな鉄塔と出合い、ここを右に登る。あともう少しである。

午後3時40分、三角点に到着。目指す石宮は三角点の先の、一段下がった場所に鎮座する。相州大山から勧請した石尊権現である。大山の阿夫利神社は巨石信仰の場で、この巨石が雨を呼ぶとされる。請雨つまり、農耕の神である。

麓の黄和田畑の人たちの信仰が厚く、正月前に供えた注連飾りと鏡もちがある。この巨大な石宮の前で頭を垂れ、ここまでの無事の御礼と、今後の行程の安全を祈願した。

炭焼きの煙が上がる黄和田畑の里

下りは正面の参道でなく、裏参道を降りる。きょうのルートでは、裏街道やら裏参道やら、やたら裏が多い。分水嶺行にはこんなルートもあるのだ。

落葉樹の雑木林の中を下る。黄和田畑の里はもうすぐ。日は西に傾きかけているが、気分はルンルンである。

足早に下っていくと、やがて小屋が出て、水田になる。コンクリートの道を下ると、左が七里川温泉だ。「天然硫黄」と看板にある。建物の中からは、湯治客の声が響く。この温泉に浸かってきょうの汗を流せたら、どんなに幸せだろか。

だが、山馬鹿記者はクルマを取りに、久留里まで戻らなくてはならぬのだ。

山を降りると、右手に炭焼きのスペースがあって、黄和田畑の人たちが炭を焼いている。ハイク姿の我々を見た人たちは「石尊へ登ったかね」と尋ねる。「ええ、久留里から歩きました」と答えた。

炭焼きの煙は、この里の中空にうっすらと漂う。山里に漂う煙は、豊かさの象徴だ。山深い里で温かみにふれて、分水嶺行の初日が終わった。 (つづく)

【写真説明】石尊山の二等三角点

【写真説明】炭焼きの煙が上がる黄和田畑の里

10年4月7日 6,282
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