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岩肌がむき出たロープの場所まで戻る

[第16回] 金山ダムへ

遭難回避 3日目終える

黒塚番所跡で、金山ダムバス停まで4・4`の表示。我々は、その先の鴨川有料道路近くまで行く予定だ。

鍋石への分岐には、明治時代の三石への石の標識も残る。このルートを日帰りするのは困難なはずだ。東条の人々は宿泊しながら、三石観音に参ったのだろう。

関東ふれあい道は、ここで金山ダム方面に下る。分水嶺歩き隊は、郡界尾根を西へ向かう。

ふれあい道ならば、こぶの上に設定されるであろう道も、ここから先はこぶを巻くように高低差をなくしている。さきほどまでの擬木の道が一般道なら、ここから先は高速道のような快適さである。その快適もやがて、迷い道に陥っていく。

鍋石の分岐とおぼしき地点で、尾根を南側に取る。川崎勝丸さんが、先頭で支尾根を降りていくが、どこまで尾根を進めても、正確な出口に向かわない。雄弁な川崎さんが無口になる。何度かアップダウンを繰り返す。たばこの吸殻があちこちにあり、これが人の気配を感じさせるが、ハイカーならこんな場所で吸わないだろうし、こんな風に吸殻を残さないはずだ。この吸殻にも惑わされつつ、やがて支尾根が間違っているのでは、という疑念が湧く。

遭難の多くは、闇雲に沢に降りて発生するという。低地へ下れば助かるような気がするが、沢を下って里に降りられる保障などどこにもない。木々で先は見えない。沢へ降りても、ここでは金山ダムの支流だろう。ダムへ向かう沢へ降りることは、遭難を意味する。

金山ダムの船代橋に出る

川崎隊長が沈思黙考。3人の意見は「来た道を戻る」である。すでに支尾根で1時間ロス。腕時計は午後4時近い。このまま郡界尾根で暗くなるのも避けたい。分水嶺を安全に歩く、それが取材の大前提である。

支尾根を戻る。悔しいが仕方ない。安全第一だ。

岩肌がむき出たロープの場所まで戻り、その先を南に降りる道を行く。木々のあちこちにビニールテープがあり、ここがハイカーのルートであると、安心感が増す。

降りた先は金山ダム左股のトンネルのある林道。ガードレールやトンネルという人の造作に安心感を覚える。時計は午後4時33分を指している。何はともあれ、人の気配のある場所へ出た。周囲には夕暮れが迫る。遭難ではない。なんとか下山できたのである。

(つづく)

【写真説明】岩肌がむき出たロープの場所まで戻る

【写真説明】金山ダムの船代橋に出る。遭難は回避

10年4月17日 6,495
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