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2007年11月19日から同21日までの3日間、仙台で第20回日本内視鏡外科学会総会が開催されました。

この学会は近年急速に普及した内視鏡下手術に関する研究をする学会です。現在では外科のみならず、産婦人科、泌尿器科、整形外科なども加わっており、会員数9000人超の大きな学会です。

この学会は他の学会と同様、長年の間、医師のみの学会でしたが、昨年から看護師、臨床工学技士(略してME=medical engineer=とかCE=clinical engineer=と呼ばれる)も参加する学会となりました。そのきっかけとなったのが亀田総合病院のME近藤敏哉の活躍です。

近藤は私が亀田総合病院へ赴任した1996年に日本内視鏡外科学会での研究発表を始めました。私は当時から内視鏡下手術には多くのハイテク機器が使われるため、医師と看護師だけでは運用が十分にできないと考えており、MEの役割を大変大きく評価しておりました。そのため5月に赴任後、近藤に、外科医ばかりの学会だがMEの働きが大変重要な分野なので、この学会で研究発表をするように薦めました。初めは医師ばかりの学会へ出ていていってMEが研究発表や講演をするなんてとんでもない、と驚いていましたが、やがて説得に応じて演題申込をしました。なにしろ初めての経験でしたから私がいろいろと手を出しての原稿となりました。発表すると学会参加者からMEの発表を聞いて、驚きの声があがりました。

その後、近藤は毎年研究発表を続け、今年で12年目です。3年ほど前から私は学会の要職にある人達に、この学会は医師のみならず、手術室看護師とMEも参加する学会にすべきであると説明してきました。その証拠として亀田総合病院のME近藤がすでに10年続けてこの学会で発表し、また医師と同様の年会費も払っていて正会員であることを訴えてきました。その近藤の努力が実って、昨年はMEと看護師を呼んでシンポジウムも組まれました。また今年からは医師以外の職種の人は、割り引き年会費と割り引き学会参加費で学会活動に参加することができるようになりました。ただし、これまで正会員として高い会費を払ってきた近藤にお金を返すわけにはいかないのでお許しいただきたい、ということになっています。

学会の中でME部門の発表のセクションができましたが、当然のようにそこは近藤が司会者となりました。これまでの実績から誰が見てもこの分野では近藤が第一人者であることが広く認められたのです。近藤は司会者としての仕事以外にも「特別企画 ビデオコンテスト―オペナース・MEによる手術室での工夫」でのビデオを用いた発表でも内視鏡下手術におけるMEの役割の重要さを強調してきました。近藤はそれ以外にもシンポジウムの中でシンポジストとしての自分の研究発表もしています。

さらに特筆すべきは近藤の下で働いている若きMEの片倉真実が「ワークショップ 手術周辺機器の保守点検」という部門でワークショップの演者に選ばれていたことです。一般演題の発表でも大変なことですが、特別演題であるワークショップの演者に選ばれたのですから大したものです。発表が立派であったのみならず、演題発表後ステージに登壇してずらりと列び他の演者とともにディスカッションが行われたのですが、そこでも片倉は堂々と渡りあっていました。私には美しい女子アナがしゃべっているように見えました。私は喜んでカメラをもってステージの直ぐ下まで進みでて片倉の写真を撮りまくっていましたが、きっと参加者には「あの子のお父さんが立派になった娘の姿を夢中で撮っている」と映っていたことでしょう。まさにその心境ですから全く恥ずかしいと思っていません。片倉は恥ずかしがっていたでしょうね。

このように亀田総合病院のME達は日本の内視鏡外科学会の中で有名です。この分野における日本のリーダーなのです。12年前に水飲み場まで連れていくのに苦労した牛は、今では私が何も言わなくても、仲間をも連れて水飲み場へ来て、皆で楽しんでくれています。近藤がほんとうに立派に育ってくれて、涙が出るくらいうれしいです。これからは後輩の指導にも力を発揮してくれるものと期待しています。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

07年11月26日 14,211
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