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私はかつてよりこの欄でも「社会福祉目的に消費税をあげるべきである」という意見を述べてきました。

今回、自民党の財政改革研究会(会長・与謝野馨前官房長官)が2007年11月20日、中間報告の原案として「社会保障目的明確化し、消費税の名称変更」することを提案しました。

消費税を社会保障目的税とすることを明確に打ち出し、原則として全額を社会保障の給付に充てるとした上で、目的が分かるように名称変更も提言したのです。そのうえで2009年度と10年代半ばの2段階で、税率引き上げを提言しています。原案では、現状を「中福祉・低負担の状況で、国民全体として受益に見合った負担がなされていない」と分析し、今後の社会保障費が増加することが見込まれることから、「中福祉・中負担を目指すべきだ」と指摘しています。

少子高齢化が進行した現在の日本の状態を考えれば、理解しやすい指摘だと思います。

消費税については「人件費や事務費などに充てるのではなく、『国民にすべて還元する』との原則の下、国民に対する社会保障給付のための財源」と位置づけ、名称変更を求めています。給付と負担の関係をわかりやすくするため、財政を社会保障と非社会保障部門に分割し、社会保障部門では給付に見合った負担を求めることも打ち出しました。非社会保障部門の歳出には消費税以外の歳入を充て、歳出の抑制・効率化を目指すというのです。

これらを読むかぎり、経済学に疎い私にも大変分かり易い話だと思われます。

原案にはまだ上げ幅は盛り込まれていませんが、最終的な税率が10〜13%程度となる方向で調整していると報道されています。私はこの程度の負担は我慢しなればならない社会情勢だと思います。国によっては20%前後の所もあるのですから、人類の歴史上もっとも速いスピードで高齢化が進むわが国としては受けいれざるをえないでしょう。

少子高齢化の下で、社会保障制度を確実に維持していくには、国民各層が広く負担し、景気変動の影響を受けにくい消費税の税率引き上げが不可欠です。しかし、小泉内閣では消費税論議が封印され、安倍内閣でも税制抜本改革の検討を先送りしてきました。こんな背景の中で、ようやく与党の中から、具体的な税率引き上げ時期や幅を含めた提案が示されたことを高く評価したいと思います。

しかし心配なことがあります。自民党内には消費税論議に消極的な意見も残っており、肝心の福田首相も最近、「今、消費税のことを言うと、国民は怒るだろう」と発言しています。なんと無責任はことかと怒りを感じます。国民を愚弄した言葉です。国民はもっと賢いのです。選挙用の人気取り作戦にそう簡単には騙されないことを理解してほしいものです。選挙の直前になると消費税率引き上げから目をそらし続ければ、将来の国民生活に大きなツケが回ってくることをしっかりと発言しながら政治活動を続けてほしいものです。

かつて自民党が消費税を上げないと言えば、これに反対していた民主党は、最近では消費税率の引き上げに反対しています。一昔前、「なんでも反対のS党」という言葉がありましたが、民主党が第2のS党にならないように祈っています。消費税の増額に関して与野党が具体的な選択肢を示して、合意形成へ向けた論議を進めてほしいものです。党利党略丸だしの行動だけは慎んでもらいたいです。医療者として、このままでは医療崩壊、社会保障崩壊が進むことを実感しています。医療費削減政策ばかりでは、医療機関が消滅していくのは避けられません。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

07年12月3日 11,823
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