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共同通信社が、病院も荒れだして、「暴言・暴力お断り」というカラーポスターを貼りだした病院があると報じました(2007年12月10日)。その病院は船橋市立医療センターで、このポスターが救急外来ロビーに張り出されていると報じています。

最近は暴力事件の報道が多いのですが、悲しいことに病院でも「患者や家族からの暴力への対策」を講じなくてはならない時代となりました。医療安全にいち早く取り組んできた同病院は、2007年4月からポスター掲示に踏み切ったといいますから、先進的な病院だと感心します。

医療機関を維持するうえで大きな問題のひとつは、患者や家族からの暴言・暴力に耐えきれず、看護師や医師が理不尽な要求が精神的ストレスとなって仕事を辞めていく事例が増えているということです。舩橋市立医療センターは、事件やトラブルに対応しなくてはならない件数が徐々に増えてきて、2006年度は暴言・暴行・威圧・恐喝が9件、盗難が5件、不審者侵入が3件あり、このうち5件は110番通報したと報告しています。どこの医療機関でもこういう事例は増えつつあります。

これまでの病院では、患者や家族が荒々しい行為をしても、医療従事者は「苦しんでいるのは患者だから仕方ない」と我慢してきました。しかし最近では病院でも暴力が横行し、スタッフを守らなければ、質の高い療養環境を維持できないという状態になりました。一昔前では予想もしなかった事態です。

患者や家族からの暴力行為や暴言から身を守るためのシステムも確立されつつあります。暴力行為が発生した時には院内放送で「コードホワイト」とか「コードイエロー」とかいう放送が流されて、緊急事態であることを知らしめ、その分野の担当職員が駆けつける仕組みをつくったりしているのです。

厚生労働省も医療機関の安全管理の必要性を理解して、院内暴力や犯罪について昨年、都道府県に通達を出し、医療機関に安全管理体制を明確化するように指示を出しました。その中で暴力を容認しない掲示や対策マニュアル、防犯設備拡充、警察との連携などを提案しています。

亀田メディカルセンターでも、これに準じたシステムをつくり、その内容を職員に理解させるようにしています。「医療崩壊」「日本崩壊」をくいとめるためにしっかりした態勢をつくっていく必要があります。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

07年12月24日 13,946
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