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今回の海上自衛隊のイージス艦と漁船の衝突事故は、犠牲になった漁師さん親子が我々の地元勝浦市の方であったこともあり、私も大きな関心を持ってみています。

原因究明が徐々に進み、現段階では、イージス艦の乗員による、あってはならない人為ミスがいくつも重なったことが原因だった可能性が高まってきました。

昨日(2008年2月27日)はイージス艦「あたご」艦長が事故で行方不明になっている吉清治夫さん(58)、哲大さん(23)親子の千葉県勝浦市内の自宅を訪れ、謝罪しました。

舩渡艦長は謝罪後、初めて開いた記者会見で「(艦船の)指揮は私が執っており、監督責任を含めた全体の責任がある」と述べるとともに、事故当時、現場海域で航行していた漁船について「認識が不足していた」と認めました。

これまで海上自衛隊および防衛庁の対応が極めて不適切、不誠実で、国民の間で顰蹙を買っています。私も信じられない反応だと驚いています。調査が進むに連れて、自衛隊側の非はさらにハッキリしてくるでしょう。それにともない、自衛隊、防衛庁および自衛隊員への批判も増えてくるものと思います。

しかし、一方で私が心配しているのは、「あたご」の艦長をはじめ自衛隊員の家族へも報道陣が押しよせていろいろと取材をしようとするのではないかということです。これまでの多くの事件を見ていても、報道陣の信じられないような人権侵害行為が目立ちました。事件で責任を問われる側に対して集中砲火を浴びせると同時に、その責任者の家族にも非難がいったり、ハラスメントをしたりする傾向が出て来るのはまことに情けないことです。どうかメディアの皆様には、その点、良識を持った行動をお願い申し上げます。

私自身も含め国民は、自衛隊員、特に今回の「あたご」乗組員のご家族が今どんなに辛い気持でおられかにも思いをいたす必要があると思います。学校で彼等の子どもさん達がイジメにあったりしないように、教育関係者の御高配もお願い申し上げます。

私はなにも自衛隊、防衛庁の肩を持とうというわけではありません。何か事件があるたびに見せつけられる「反論できない状態」に置かれた責められる側の人達、また時にはその家族をも、一方的に責めまくる非人間的な行為だけはしたくない、してもらいたくない、という思いをお伝えしたいのです。

吉清さん親子の早期救助と、吉清さんのご家族および地元の皆様が1日も早く通常の生活に戻ることができますようにと、お祈り申しあげます。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

08年3月3日 22,011
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