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日経ヘルスケアから配信されるニュースの中に、「病院クレーマーに初の仮処分・大声での威嚇や誹謗中傷を禁止」という表題のニュースがありました。

近年、患者の権利意識が高まってきたのはよいことだと思っていますが、一方で、こんな非常識なことを言われてはかなわない、と思われる事例も散見されるようになりました。これでは近いうちに医療者側も我慢しきれなくなり、なんらかの防衛行動にでなければいけない、と思っていましたので、「やっぱり」というのが私の正直な感想です。

これまでは、患者さんが相当な我がままを言われても、医療者側は「病人を労る」という基本原則によってかなり我慢強い対応をしてきたと思います。

しかし、それも度を超した例では、今回の春日部市のような対応が必要になります。仮処分を受けたのは、春日部市立病院に入院する90歳代の女性患者の息子とその妻です。共に60歳代で、春日部市内に在住しています。春日部市によると、患者は2006年3月に同病院に入院したが、その直後から息子夫婦が病状について再三にわたり説明を要求していたといいます。「多いときには日に5〜6回、医師や複数の看護師に同じ質問を繰り返し、夜に再び電話で確認してきた。これが数週間にわたって毎日続き、いったんは収まっても再度繰り返されるなど、診療行為の妨げになっていた」(春日部市)といいますから病院および職員は困ったことでしょう。春日部市は「病院の診療体制を正常化するため、仮処分の申請に踏み切った」と説明しています。

これに対してさいたま地方裁判所越谷支部は3月25日、春日部市立病院の入院患者の家族に対して、春日部市が申し立てていた医療行為の妨害を禁じる仮処分を決定しました。いわゆる「病院クレーマー」の迷惑行為を禁じたもので、患者側に対する仮処分は全国でも初めてとのことです。

この事件を担当した弁護士の井上清成氏(井上法律事務所)は、「医療現場の負担が増す一方で、患者の医療に対する期待度は高まっており、苦情は増える傾向にある。苦情の度が過ぎれば今回のようなクレーマー≠ノなるが、今回の仮処分はクレーマーから病院を守る手だてができたという意味で評価できる」と話しています。

これまでは患者さん達が不満を表明されると、院長はじめ病院管理者がすぐに頭を下げてお詫びする光景がマスコミでよく報道されてきました。もちろん、大部分はなにか落ち度があったからそうなっているはずですが、中にはどうしてこれで病院が謝らなければいけないのか、まったく管理者は事なかれ主義で問題の本質から目をそらしている、と医療従事者達が怒る例も少なくありませんでした。今回の件で、同病院長は、「市立病院は、これまでも市民の方々、患者様の命と健康を第一に、安心・安全かつ適切な医療を提供してまいりました。今般の仮処分申立が認められたことは、当然のことと受け止めております。医療を提供する側は当然のことですが、医療を受ける立場の方々も社会通念上のルールを尊重していただき、市立病院を利用していただきたいと願っています」と述べています。

これからは、患者さんのご意見を謙虚に聴くことが重要であることがもちろんですが、医療者側も筋の通らない非難や要求には断固、反論したり、意見を主張したりする必要があります。それが真によい医療の実践につながると思います。皆様の御理解をお願い申し上げます。

08年4月7日 23,088
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