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療養病床の大幅減へ各県が奮闘中

長期入院する患者が利用する医療機関の療養病床を削減する国の取り組みが本格化してきました。

療養病床を減らせば、在院日数の短縮につながり、医療費が抑制できるという狙いから出た政策で、医療型と介護型の2類型合わせて約35万床を再編し、2011年度末には医療型を15万床程度にまで減らす構想です。その実施にあたって、各都道府県は病床数を設定し、2008年4月開始の医療費適正化計画に反映させなければならないので大変です。

基本的な考え方は、「今後、療養病床は医療必要度の高い患者のみが利用できるようにし、それ以外の人には、老人保健施設(老健)やケアハウス、有料老人ホームなど、介護保険が利用できる施設などの利用を促す」というものです。厚労省は2011年度末までに、介護保険が適用される療養病床を全廃し、比較的症状の重い患者が入院している、医療保険適用型の療養病床のみを残す方針を打ち出したのです。いわゆる「社会的入院」をなくそうとするものです。

厚生労働省は、「看板を掛け替えてもらうだけ。行き場のない患者が出ないようにしたい」と気楽に言ってくれますが、各県での苦労は大変なものです。各都道府県は、計画策定に当たり、数字合わせに終始せず、住民の意見を十分に反映させるように努力しているのですが、そう簡単にいくはずはありません。最近はその努力の様子が各新聞の地方版に登場するようになりました。

岐阜県の計画によりますと、2006年度の県の総医療費は5113億円で、うち70歳以上の医療費が44%を占めました。2012年度は総医療費が6178億円に増え、70歳以上の医療費割合が49%に上昇すると予測しています。このため、県は療養病床を現在の3735床から2012年度に2703床に減らすうえ、平均入院日数を27・5日から26・6日に短縮する方針です。その結果、2012年度の総医療費を約51億円減らすことができ、70歳以上の医療費の割合も48%に抑えることができるとしています。岐阜県健康福祉政策課は「療養病床は、厚労省が定める目標(1910床)より多く残しており、老人医療に細かく対応していきたい」と県民の理解を求めています。少し厚生労働省の方針に反旗を翻した印象があります。

長崎県は高齢者の介護や医療サービスの将来像「地域ケア体制整備構想」をまとめました。政府が大幅な削減を打ち出している療養病床について、2011年度末までに4割を削減し、老人ホームなどに転換する計画だと言います。厚生労働省の方針に沿った行動をしようと涙ぐましい努力をしています。

私はこの厚生労働省の大幅な療養病床削減計画は、「低医療費政策」という根本が間違った政策のうえに作られたものと思っていますから、各県は焦って厚生労働省の方針を実現させようとしてはいけないと考えています。療養病床利用者の平均年齢は82・6歳、介護型療養病床に限ると、約88%が75歳以上と非常に高齢な人が多いだけに、本人や家族が不安にならないよう対応する必要があります。

私は各県が県民の真の幸せを考えると、岐阜県のように、厚生労働省の方針に反する行為をする勇気を持つことも必要だと思います。そして全国民が低医療費政策の間違いに気付くべきだと思っています。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

08年4月14日 25,983
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