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いいかげんにしてくれ!

健康保険法に基づいて医療を行っている私達、日本の医療従事者は、その大元を牛耳っている厚生労働省には頭が上がらない立場で、いつもオドオドしながら医療を営んでいます。

その厚生労働省が発表する方針には敏感に反応しなければなりません。それ故、厚生労働省の短期間での方針転換にはいつも「振りまわされる」思いがいたします。

最近の典型的な例を挙げましょう。

2008年4月27日には、「生活保護には安価薬(ジェネリック医薬品) 不使用なら、手当打ち切りも 厚労省通知」(毎日新聞)とう見出しの記事が載り、驚きました。内容としては以下のようなものです。

全額公費負担で医療を受けている生活保護受給者への投薬には、価格の安いジェネリック(後発)医薬品を使うよう本人に指導することを厚生労働省が都道府県や政令市などに通知していることが分かった。指導に従わなかった場合、生活保護手当などの一時停止や打ち切りを検討すべきだとしている。後発薬は価格が安い半面、有効性などについての情報不足から使用に抵抗感を持つ医師や患者もおり、専門家から「患者が選択できないのは問題だ」と批判が上がっている。通知は4月1日付。医学的理由で医師から指示され先発薬を使う場合を除き、生活保護受給者が医療機関で薬を処方される際、都道府県や政令市などの所管する福祉事務所が後発薬を使うよう本人に周知徹底する、としている。これを受け受給者は、医療機関で受診する際、後発薬を処方するよう医師に求めることになる。先発薬を使い続けている受給者については福祉事務所が診療報酬明細書をチェックし、正当な理由がない場合は口頭や文書で指導する。それでも従わない場合は保護の一時停止や打ち切りを検討するとしている。厚労省保護課は「生活保護の医療扶助は最低限の医療を受けてもらうのが目的。安全性や効用が同じなので安い後発薬の使用に問題はない。窓口で3割負担する人と比べ、負担のない受給者は(自ら)後発薬を選ぶ動機が働きにくく、制度に強制力を持たせないといけない」と説明している。

こんな恐怖政治がまかり通るのかと、恐ろしくなりました。各方面から批判が出たのはいうまでもありません。例えば医事評論家の水野肇さんは、「後発薬は先発薬と完全に同じものではなく、薬を変えられれば不安を感じる患者もいるだろう。国が安全性や有効性を十分証明した上で患者が選べることが重要。生活保護受給者だからといって後発薬を事実上強制するのはおかしい」と述べました。

その結果、どうなったかというと、「手当打ち切り%P回、都道府県に厚労省通知 ジェネリック医薬品、使用指示問題」(毎日新聞、4月30日)となりました。「生活保護受給者は安価なジェネリック(後発)医薬品を使うよう、厚生労働省が自治体に指導を指示していた問題で、厚労省は30日午後、従わない場合の手当打ち切りなどの対応を撤回する通知を都道府県などに出す。舛添要一厚労相が閣議後会見で明らかにした」という内容です。

新たな通知は、後発品は国民全員で使用を進めていくとの趣旨を受給者に説明するとし、強制措置の検討は盛り込まない、としています。舛添厚労相は通知について「役人言葉で書かれており国民の目線に立っていなかった」と不備を認めました。

なんとも情けない、朝令暮改の厚生労働省迷走劇でした。

こんなことが珍しくないくらい、厚生労働省が発表する医療の方針は頻繁に変わり、そのたびに日本の医療機関は右往左往しなければなりません。もちろん最も迷惑を蒙るのは、医療従事者も含んだ患者である国民です。念のためここでも申しあげます。

医療従事者は患者ではないかのごとき視点に立った報道をよくみますが、医師をはじめ医療従事者も他の国民と同様の確率で病気になり、患者になっているのです。

08年5月12日 23,803
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