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変貌する「喫茶店」

5月28日から30日にかけて日本肝胆膵外科学会学術集会が山形で開催されたので行ってきました。

消化器外科医が集まる学会は、日本の他の学会に較べてアグレッシブなことで知られていますが、その中でも日本肝胆膵外科学会はもっともその傾向が強いといえます。朝は7時半から始まります。その前に各種委員会が6時台に始まることも珍しくありません。学会の認定医になるために(またはその維持のために)出席が必要な教育シンポジウムなどは、第1日目の午前7時半に始まるように設定されています。出席を認めるハンコをもらうには最後まで在席して、終わった時に始めて判を押してもらえるシステムです。また、もう1単位稼ぐには、最終日の午後の教育シンポジウムに出席しないといけないようになっているので、結局、第1日目の早朝から最終日の午後までいないといけないようになっています。「ちょっと抜けだして観光を」と思っても難しいのです。私はその間に座長の仕事などが入りますから、昼間に抜けだすのはますます難しくなってきます。

そんな中で少しは仕事以外のことで新しいことを思いつきました。

学会の最終日が終わった後に山形駅の近くを歩いてみました。とくに変わったところもない駅前商店街ですが、歩きつかれてちょっと喫茶店に入ろうと思いました。ところが私のイメージする喫茶店が全くありません。東海地方には今でも昔ながらの喫茶店があるのですが、関東ではほとんどなくなっています。山形でもやはり見つからず、やっと見付けたのが「ミスタードーナッツ」でした。最近はこういうのが喫茶店なのですね。

中に入ってみると、昔の喫茶店と違って週刊紙や新聞はありませんが、多くのお客さんが自分の本を読みながら珈琲を飲んでいました。その中で親子と思われる2人が勉強をしていました。父親が小学生の息子に教材を使って教えていたのです。古い私の頭には「喫茶店で子どもに勉強させる」というイメージが全くないので、不思議な感じがしました。こういう時代なのか、と感じざるをえません。

そういえば、私の息子も時々、友人と待ちあわせて「マクドナルド」でいっしょに勉強をしてきた、と言っていますね。そんなところで長時間、滞在すると店の人に嫌がられるのではないか、と気になるのですが、彼に言わせると、今はそういうのが普通なのだそうです。その傾向は山形でも同様であると痛感しました。先日、学会誌の編集委員会で東京へ行き、終わってから会場の近くにある170円で珈琲を飲ませる店へ入ったら、大勢の大人達がコンピューターに向かって仕事をしていました。170円で水も飲み放題だし、一瞬にして仕事場ができるのですから効率的ですね。

私もこれからは「ミスタードーナッツ」や「マクドナルド」といった施設を手軽に勉強部屋や仕事場にするマインドセットを身に着けようと思います。現在の若者文化のよいところを採りいれていかないといけません。(2008年6月2日記載)

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

08年6月10日 16,646
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