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大局的見地からみてほしい

「救急救命士が医師の指示なく薬剤投与 長崎・佐世保」。こんな表題の記事が2018年2月11日に、朝日新聞デジタル(アピタル)から配信されました。

私はこの表題をみたときに、こんなことで救命救急士を罰しては絶対にいけない、こんなことをしたら日本の救急医療は崩壊する、と思いました。

昔から医療の世界では、厳密に言ったら医療法、医師法に違反していることになるかもしれないと考えながらも、無資格者による薬剤投与や医療行為がなされてきました。それによって日本の医療が維持されてきたと言える部分もあったと私は思っています。

私が医師になって間もないころに赴任した僻(へき)地の病院では、全身麻酔中の麻酔調節は、看護師または無資格の病院職員が行っていました。新米外科医である私が、麻酔の導入、気管内挿管をすると、その後の薬剤投与、呼吸の維持は看護師またはその他の病院職員に頼んでいました。外科医たちは、麻酔が安定したら手術へ入って、麻酔の維持、薬剤投与は口頭で指示を出して、看護師たちにやってもらっていました。

病院によっては「うちでは婦長が挿管もやっている」という大きな公立病院もあったほどでした。

以上は、遠い昔の話ですので、今さら昔の話を蒸し返して、当時の関係者の違法行為を責めたりしないでいただきたく思います。

現在でもそれに近い状態の医療機関もまだあるのかもしれません。離島ではやむを得ないところもあるでしょう。

これらを厳密に検証すると、日本の医療が回って行かなくなる恐れがあるので、私自身、この原稿を新聞に掲載してよいものかどうか、逡巡(しゅんじゅん)しています。国民、本紙読者の皆様には、どうか大局的見地に立って、今回報道された事件をみていただき、現場で医療に従事している人びとに温かい応援をお願い申し上げます。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

18年2月19日 889
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