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房日新聞の読者の皆さんも「ロボット手術」という言葉をお聞きになったことがあると思います。

手術医療の世界においても、手術機器の開発は着実に現在も進んでおり、そのひとつが「Robotic Surgery=ロボット手術」です。

現在、最も市場に普及しているロボットは、内視鏡下手術支援ロボットといわれるda Vinci Surgical System(Intuitive Surgical, Inc.、以下、da Vinci)です。

ロボット手術という言葉が広く普及したため、「外科の医師も、今はロボットが勝手に手術をやってくれる時代になって、楽になりましたね」と仰る方がおられてびっくりするのですが、実際の手術は外科医の手の延長となるロボットを外科医が操作して手術を行っていますので、鉄腕アトムのようなロボットがどんどん手術を進めてくれるわけではないので誤解のないようにお願い申し上げます。

ロボット支援下手術では、執刀医はサージョンコンソールという、いわばコックピットで手術を行うことになります。ビューポートをのぞき込み、三次元表示モニターを見ながら、手では2本のマスターコントローラーを、足ではフットスイッチを操作することによって手術を行うのです。

実際に手術を行うのはda Vinciのペイシャントカートと喚ばれる部分です。ペイシャントカートは、サージョンコンソールより発せられた執刀医の指示を忠実に行うのです。ペイシャントカートには専用カメラの装着アーム1本と、da Vinci用の鉗子の装着アームが2または3本あります。

da Vinciの鉗子は多関節の高性能鉗子で、さまざまなタイプの鉗子や尖刀などが準備されているのです。また、術者の手と鉗子の動きの縮小倍率を調整することができるスケーリング機能や、術者の手の震えを除去できる手ブレ防止機能がついているで、手術の安全性が高まります。

このda Vinciを用いると、腹腔鏡下手術の弱点である鉗子動作の制限や二次元での操作などといった問題点が克服でき、より安定した精度の高い手術が可能となるのです。

私は1991年から腹腔鏡下手術を始め、この領域のパイオニアの1人だと思って生きてきましたので、ロボット手術が出現した時には、「こんなロボットなど使わなくても、オレは優れた手術をやっているぞ」と思っていました。

しかし、最近、千葉徳洲会病院へ移ってから泌尿器科医たちがやっているダヴィンチを使った前立腺がんに対する前立腺全摘術などを見ていると、「三次元画像下」に「多関節機能」を使ったロボット手術は、従来の腹腔鏡下手術を凌駕(りょうが)する可能性が高いことを認めざるをえない時代が来つつあることを感じざるをえません。

南房総でも、数か月前に君津中央病院がダヴィンチの最新版を導入したというニュースが新聞に出ていました。同院の院長に学会で会った際に経過を聞くと、どんどんロボット手術症例が増えているとのこと。私が現在院長をやっている千葉徳洲会病院でも、急速に前立腺がんに対するロボット手術症例が増えています。前立腺がん手術ではロボット手術が当たり前、という感じが強くなっています。

最近、ロボット手術の保険対象になる術式が12術式と急に増えましたので、今後は前立腺がん以外の領域にもロボット手術が普及していくと思われます。千葉徳洲会病院でも、泌尿器科以外に婦人科ですでに始めており、外科も準備を進めております。院長として、時代の流れに乗り遅れないように態勢を整える責任があると、気を引き締めています。

日本へのロボット手術の導入初期には、保険適応がない手術はやらない、という方針だった私でしたが、現在は、保険も使える術式がこんなにも増えてしまいましたので、患者さん方のニーズに応えるためにも、ロボット手術がさらにスムーズに行える環境づくりをしています。時代の大きな流れには逆らえません。もちろん、現在でもロボットに頼ることなく、優れた手術をしておられる施設はいくらでもありますし、そういう医師たちには、心よりエールを送ります。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

18年4月2日 915
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