企画・エッセイ » 記事詳細

国内では高校野球で沸いた最近1週間でしたが、野球の世界でもっともファンを興奮させてくれたのは大リーグへ移籍した大谷翔平選手でしょう。

昔から高校野球では、ピッチャーで4番という選手はたくさんいましたが、いったんプロ野球の世界へ入ると、厳しい世界ですから、皆、投手か打者かの選択をせざるをえませんでした。

しかし、野球ファンの理想とする選手像、憧れはやはり「投手で4番打者」というパターンでしょう。プロ野球の世界でこの理想に近い夢を叶えてくれたのが大谷選手でした。

もちろん、プロ野球の世界では、常に投手が4番バッターということはあり得ませんが、大谷選手は、エース級の投手であり続けながら、ホームランバッターであり続けてくれました。

この大谷選手が大リーグに挑戦し、これまでの1週間では、投手としても打者としても優れた成績を出してくれています。初登板で初勝利を挙げ、すでに開幕戦では指名打者で先発して安打を記録して、これで「二刀流」デビューを果たしていました。

球団によると、開幕戦に先発出場した野手が、開幕10試合以内に投手で先発登板したのは1919年のベーブ・ルース以来99年ぶりというのですから、大リーグの記録を塗り替えたといえます。

試合後は「ここまで来たというよりは、始まったという感じが強い」と、米国での二刀流スタートに感慨を述べたと報道されていますから、今後も投打両面での活躍を期待したいと思います。

今回の米移籍は、二刀流への挑戦という意味で、これまでの日本選手のそれとは事情が大きく異なるとメディアも注目しています。

岩手・花巻東高時代、米球界入りを目指す意思を撤回してプロ野球・日本ハム入団を決めたのも、昨年12月、移籍先にエンゼルスを選んだのも、二刀流を認めたうえでの青写真を球団がしっかり描いたからだと報じられています。彼はほんとうに大人の夢でもあり、子どもの夢でもある、皆の大きな夢を着実に実現してくれつつあります。

オープン戦は投打ともに順調といえず、米メディアの間で懐疑的な見方も広がったとも言われましたが、その後、投手デビュー戦の好投に「争奪戦の理由を証明した」など賛辞が相次いだものでした。

投手としての高い可能性が証明された後、大打者としての活躍が期待されていましたが、やってくれました。アナハイムでのインディアンス戦に「8番、指名打者」でフル出場して本拠地デビューし、メジャー初本塁打を放つなど4打数3安打3打点2得点1三振だったのですから、誰が見ても、すごいの一言でしょう。打点と1試合複数安打も今季初でしたが、3―2の一回に初打席で3ランを放つと、三回に右前打、八回には中前打をマーク。固め打ちでチームの大勝に貢献しました。

心配な点として、大リーグの長距離移動や過密日程など待ち受ける障壁は高い、適応力が問われるのはこれからだ、投手と野手との併用は他の選手起用にしわ寄せが生じる、ともすれば、チームの不協和音の原因になりかねない、常に結果が求められる立場だ、 などなど、いろいろな懸念が報じられていますが、日本人のみならず、世界の人たちと一緒に大谷選手の活躍に期待して、彼を応援していきましょう。皆で大きな夢を見続けましょう。彼こそ、現在のヒーローと呼ぶにふさわしい一人です。

* * *

加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

4月9日20時00分 878
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved