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少子高齢化問題が深刻化するわが国では、お年寄りをいつまで働かせるかが、大きな問題になりつつあります。すべてのお年寄りが60歳で定年退職して、そのまま年金生活に入られると社会保障費が莫大な額になるので、国としては元気な老人にはできるだけ長く働いてもらって、いつまでも支える側に居てもらいたいと考えるのは当然です。

支える側の若い人たちからみても、あんなに元気な老人が年金もらってのんびりやっているのは許せない、と考えるようになるでしょう。

私自身が問題視されている団塊世代の1人ですから、いつもこの問題には神経を使っています。本当は、自分はいろいろと病気を持っているので、早めに退職して年金生活に入った方が長生きできるだろうなと思っても、連日報じられる少子高齢化社会問題、社会保障費問題などを見ると、体が何とか動いているのに仕事を辞めることに後ろめたさを感じざるをえません。以前、本欄で書きましたように、われわれは生きている限り働き続けて、若い人たちに迷惑をかけないようにしなくてはいけないと思っています。

私の子ども時代に、近所に自衛隊員の人がいて、まだ若くてとても元気なのに「ワシはもう定年だから仕事を辞めて、後は恩給をもらってのんびりやらせてもらいます」と仰っていた言葉を今、思い出しています。あのころの自衛隊員の定年は50歳前だったと記憶しています。子どもたちは、どうしてあの人はあんなに若くて元気なのに定年退職するの?と疑問に思って周りの大人たちに質問すると、「自衛隊員は危険な仕事をしなくてはならないから、定年が早いのだ」と説明され、田舎の子どもたちは「もったいないな」と思いつつも、「なるほど」と納得していました。

ちなみに、現在の自衛隊のホームページをみると、「自衛隊は、精強さを保つため、若年定年制および任期制という制度を採用しており、多くの自衛官が50歳代半ばおよび20歳代半ばで退職することになっています」と記載されています。

職場によっては、老人にもできるだけ長く働いてもらえるようにするが、給料は下げざるをえないところも多いようです。横浜市の長沢運輸のトラック運転手3人が、定年前と同じ仕事なのに賃金を2〜3割引き下げられたのは不当と訴えていた裁判で、最高裁は減額を認める判決を出しました。

2018年6月4日付の日本経済新聞は、定年後に再雇用されて同じ仕事を続ける場合に、賃金を引き下げることの是非が争われた裁判で、定年後の賃金を減額して企業が雇用を確保している現実に沿った判断といえる、と社説で述べています。

私も最高裁の決定と日経新聞のコメントを支持せざるをえないと思っています。原告にはお気の毒ですが、日本社会とわれわれ団塊世代の老人が生き延びていくには、このくらいの妥協はしなくてはならないと思います。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

6月11日20時00分 542
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