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文部科学省前局長の佐野太被告が関与した、東京医大の裏口入学問題は、いろいろと調査が続くうちに、女子受験生への不適切な点数操作がなされていたことが判明し、女性への差別問題へと大きく方向を変え、さらに発展してきました。

入学試験の採点時に女性だけ不等に減点されていたとしたら、これは入学試験制度の根本を揺るがす大問題です。

女性は医師になっても、出産、子育てなどで休むことが多いので困る、という事情が根本にあるようですが、これはどこの職場でも起こり得ることで、女性を採用する際にそれは織り込み済みで採用が決められているはずです。それを入学試験の段階で合否判定に使うとしたら、これは世の中の全女性を敵に回すだけではなく、非常識極まりない大学として、この世から抹殺されかねません。この大学の幹部には男女雇用均等法という法律があることも全く忘れられていたようです。

厚生労働省の調査では、現在の医学部生の約3分の1は女性です。同省の有識者会議が2015年にまとめた報告書では、医療の質を保つためにも、女性医師が働き続けやすい環境整備が重要だと提言しています。こういう社会背景があるのに、どうして東京医大がこんな不適切な行為を続けていたのか、不思議でなりません。

また、浪人生活を長期経験した後に入学試験を受ける、いわゆる「多浪生」に対しても、入試段階で減点操作が行われていたことも明らかにされ、不等な差別行為として糾弾されています。多浪生は、入学後も留年を繰り返したり、国家試験浪人生活を繰り返したりすることが多いため、大学の評判を落とす可能性が高いという判断によるものと思われます。

これらの東京医大の実情が、不当な行為として非難される一方で、「私立大学なのだから、ある程度は許されていいのではないか」という意見も根強く残っていると思います。「私立大学の自由度」をどこまで認めるべきか、私立いえども、国から高額の補助金をもらっているのだから、国立大学に準じた透明性を保てと言うべきか、難しい判断になります。大学入試の時に、男子部、女子部に分けて募集したらどうなのか、現役少浪生組、多浪生組に分けて募集したらどうなのか、などと考えてしまいます。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月13日20時00分 402
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