企画・エッセイ » 記事詳細

私が子どものころは、「日射病」という言葉は時に耳にしましたが、「脱水症」という言葉はほとんど耳にしませんでした。都会育ちの方々からご覧になると、「オマエのような田舎者が知らずに来ただけで、都市部の人間はちゃんと知っていたぞ」と仰るかも知れませんが、各種マスコミの報道内容を見ていると、やはり脱水症は近年、その概念が報道されることが多くなって、認知度が高まってきていると思います。

特に自然災害の被災者の皆さまに発生する事例がよく目にとまるようになりました。

また、私が子どものころは、夏の暑さも日本では40度を超えることはまずなかったのですが、最近では全国各地で39度、40度超えが連日のように報告されています。この自然現象の変化も脱水症の発生に無関係ではないと思います。典型例が私の生まれ故郷である岐阜県多治見市です。

多治見市といえば、現在では熊谷市と並んで、日本一暑いところの代名詞になってしまいましたが、昔は、岐阜市と名古屋市が日本一を競い合っていたものの、多治見市はこの2市と比べれば、涼しい方でした。学生時代も夏休みに岐阜市から多治見市へ帰ると、本当に涼しいなあと思ったものでした。

しかし、近年では、多治見市周辺でも熱中症のために救急車搬送される例が報道されています。短期間の間に、地球上の至る所で気象変動が起こっており、怖いです。

昔は根性ものに憧れていた私でしたが、現在では冷静に世の中を見るようになり、熱中症で倒れた若者に対して、「この根性なしめ、もっと気合いを入れて頑張れ」などとは決して言いません。

脱水症も猛暑でなくても発症することがよく報道されるようになり、「冬季の脱水症」もあることが知られるようにさえなりました。

認知症のある高齢者は、脱水になっていても自覚症状が乏しいようですので、周囲の人たちの温かい見守りが必要です。

私も周囲の人たちに迷惑をお掛けしないように、自分自身で脱水にならないように注意します。しかし、炎天の空を見ると、今でも「この中で走って、厳しい練習に挑戦したい」と思ってしまう自分がいることも認めざるをえません。

なんとも、年を取って病気をいくつも抱えている自分がなさけない、悲しい。悔しい。

意地を張らず、エアコンのお世話にもなりましょう。

* * *

加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月20日20時00分 547
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved