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2020年の東京オリンピック・パラリンピックが近付くにつれ、暑い夏の東京での開催についての懸念が各方面から指摘されるようになりました。とくに今年の異常な暑さを経験したわれわれ日本人は皆、真剣に心配しだしました。私もその1人で、本欄でもその問題に触れさせていただきました。

このような事情の中、当然のようにわが国でのサマータイム制度の導入の議論が復活してきました。これはこれまでに何度も検討され、その都度、導入の決定に至らずにきた課題でした。

私は20歳代のころ、この制度を海外では導入している国が少なからずあることを知った時に、長い夏の夕方を有効に使える効果的な方法だから、省エネの観点からも、日本でも導入すれば良いではないか、と単純に思ったものでした。

最近のオリンピック時の暑さ対策の問題が議論されるようになった際にも、当然のようにサマータイム制度の導入が検討されることになったなと思いました。

しかし、実施にあたっては、複雑な難しい問題があることも明らかになってきました。

「日照時間の長い夏場に、時計の針を進めるサマータイム(夏時間)制度導入の是非を検討するよう安倍晋三首相が自民党に指示した」と報道されたことは、多くの国民が知っていることですが、今回の提案も、スムーズに実行される可能性は低いように思われます。私は、総理大臣自らが検討を指示したのだから、政府がもっと熱心に実行に向けて動くのかと思いましたが、そのようには見えません。

新聞各紙も、否定的な意見が多いように見受けられます。

新聞社の意見の中で、産経新聞の社説は簡潔にして説得力なるものと思いましたので、以下に引用させていただきます。

欧米を中心に世界約70か国で導入されている。北半球の国では3月から10月または11月にかけて、明るく涼しい時間帯を活用している。照明や冷房の使用時間を短くして省エネを進め、地球温暖化防止の効果もあるとされる。

ただ、緯度の関係から日本は欧米よりも夏季の日照時間が短い。大きな省エネ効果は見込めないのではないか。

特に東京五輪・パラリンピックの暑さ対策とするのであれば、導入に伴う社会的・経済的なコストに見合う効果があるのか十分に見極めなくてはなるまい。サマータイムよりも競技自体の開始時間を前倒しする対策などとの比較も欠かせない。

日本は戦後の占領期にエネルギー消費の抑制をねらって導入したが、国民の理解が得られずに中止した経緯がある。韓国も1988年のソウル五輪に合わせて導入したが「労働時間が長くなった」などとして撤回した。こうした過去の事例も検証してもらいたい。サマータイムは過去に何度も浮上しては消えていった。五輪に向けて導入しても混乱が生じては元も子もない。拙速は厳に慎むべきである。

軟弱な私は、安倍首相も熱心にやろうとしているから、オリンピックを機にもう一度、試行しても良いではないか、と思っていますが、賛同して下さる方は少ないでしょうね。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月27日20時00分 488
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