企画・エッセイ » 記事詳細

医療機関を見捨てるような内容

日本の多くの医療機関が、患者さんが医療費を払ってくれないこと(未収金問題)で悩んでいます。

こんな中、厚生労働省・医療機関の未収金問題に関する検討会(座長=岩村正彦・東京大法学部教授)が6月25日開かれ、最終報告書をまとめました。

未収金問題について、「未収金の発生防止を重視する」こととし、医療機関では、「患者との積極的なかかわりをもって未然防止策を進めること」と述べています。一方、保険者においても「未収金回収への協力をすること」などの文言が盛り込まれましたが、全般的に見て、医療機関への積極的な支援は認められず、「医療機関へのしわ寄せ」がさらに強くなったと感じなくてはならない結果に終わっています。

医療機関側は検討会が設置された当初、保険者が患者の未払い一部負担金を立て替えるべきと主張していました。未収金分を病院が負担していてはただでさえ赤字病院が多い(80%の医療機関が赤字の状態)のに、これ以上の負担を強いられたら破算しかねない医療機関が続出するからです。しかしこれまで「支払う必要はない」との厚労省の解釈により断念せざるを得ませんでした。今回は、少しは助けてもらえるかと医療機関側は期待していたのですが、最終的に両論併記にとどまる結果となってしまいました。これからも医療機関が未収金分の負担を強いられていくわけです。

同検討会では、未収金問題に関する実態調査を実施した結果、未収金が発生する主要な原因として、生活困窮による未払いと、悪質未払いの2ケースがあることを指摘しています。生活困窮で不払いが発生した場合は、「病院では医療ソーシャルワーカーを通じて一部負担金減免制度の周知など対応を図るべき」としていますが、それがうまく行かないから困っているのです。いったい病院側にこれ以上、どうしろというのでしょうか。官僚言葉で訳の分からないことを言われても現場は大変困ります。

一方、悪質な滞納については、「国、保険者が保険者徴収制度を適切に運営するため実施基準を明確にし、具体化を図るほか、市町村国保でも保険料の滞納分と同様に医療費についても滞納者に法的なことも含めた処分を行うこと」などの表現が盛り込まれていますが、これも具体的にはどうしろというのだ、と言いたくなります。結局、国としてはなにもしてくれない、ということでしょう。岩村座長は、「それでも回収できなかった場合もあるだろうが、まず、取り組んでみたい。今後、実施による効果を検証し、改善しなければ再度検討する」と説明していますが、これも逃げの言葉としか聞こえません。

危機感の強い医療機関からは未収金発生の未然防止策として、応召義務(医師法第19条応召義務及び診断書交付の義務)に関する解釈の見直しを求める意見も出されていましたが、これも無視された形で終わっています。

このような結果に関してインターネット上に寄せられた意見をみると、「(未収金問題は)無銭飲食と同等なので、全例警察に通報、警察が調べた上で、本当に貧窮している患者には医療費の減免措置をとればいい」「応召義務も国が決め、診療報酬、保険制度も国が決めているのに、未払いだけ医療機関に押し付けるのは筋が通らない。保険者が立て替えるのは常識的なことではないのか。 不払い者に法的処置も必要だが、医療機関側は国や保険者を相手に裁判を起こしてもいいのではないか」などの意見がありました。

どこの医療機関も国の低医療費政策で経営が限界に来ているところに、未収金も医療機関で負担せよ、と言われては我慢の限界を超えてしまうのではないかと心配です。

08年7月14日 19,057
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved