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近年、医療の問題が注目され、その中でも医師不足と看護師不足が深刻であることは周知の事実となりました。

しかし、社会保障を論ずる際に「医療と介護」という言葉があるように、医師、看護師の確保と並んで重要なのが、介護における「介護福祉士」や「ヘルパー」の確保の問題です。最近は介護労働者の確保が困難になってきて大きな社会不安となりかねない状態です。

新聞でも、毎日新聞が2008年7月21日の社説で「介護人材の確保 団塊世代と若者で支えよう」を掲載し、中日新聞も2008年7月28日の社説で「介護労働 処遇の改善が急務だ」と述べています。

この2紙の社説およびその他の報道からも明らかなことは、「介護労働者に対する給与の低さ」が介護労働力不足の最大の原因であるということです。給与が低いためにせっかくやる気を持って介護の仕事についてもやめてしまうのです。離職率の高さが際立っているのがこの業界の実状なのです。離職率が全産業平均と比べて高く、離職者のうち勤続1年以内で40%、3年以内で75%が退職しているというから驚きます。

介護保険制度が2000年に始まった際、ホームヘルパーや介護福祉士などは高齢者介護を担う重要な人材としてもてはやされたのは読者の皆様も記憶しておられるでしょう。都道府県認可のヘルパーの養成講座には多数の受講者が参加し、国家資格の介護福祉士を目指す専門学校や大学には多くの若者が夢を抱いて入学しました。しかし、厚生労働省の「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」がまとめた中間報告は、その様相が大きく変わったことを示しています。介護福祉士の資格を取得しながら実際に介護・福祉の現場で働いているのは6割弱の27万人にすぎないと報告されています。専門学校では定員割れが相次ぎ、大学の社会福祉系学部でも入学者は定員ぎりぎりだというのですから、高齢化が加速するばかりの日本の介護はいったいどうなってしまうのかと不安です。

これほど人気がなくなったのは「仕事内容の割には給料が安い」「仕事への社会的評価が低い」など労働条件がよくないことが最大の理由です。これを改めない限り、「やりがいのある仕事だから頑張りなさい」といっても限界があります。劣悪な勤務状態のために勤務医が臨床現場を立ち去っていって「医療崩壊」を招いたのと同様、このままでは「介護崩壊」の状態になるでしょう。

先の国会では、介護従事者の処遇改善法が全会一致で成立しましたが、この具体化の一環として来年4月の3年ぶりの介護報酬改定の際に介護報酬を大幅に引き上げないと、ほんとうに「介護崩壊」を招くことになるでしょう。

08年8月4日 20,714
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