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わが国で約10年前からおこなわれてきた「ゆとり教育」路線が変更されて、もっと勉強させるように方向転換したことは、国際競争力をつける観点からも歓迎すべきことだと思います。「ゆとり教育」が提唱された頃、私はこの欄でそれに反対する意見を述べました。「働き足りない日本人が増えてしまった現在の日本に、ゆとり教育などと言っているゆとりはない」というのが私の提唱でした。

最近では「ゆとり教育の間違い」が広く認識され、政府も方向転換をしました。

さらに、今回は「教科書の厚さを倍増」案が出ていることが明らかになりました。政府の教育再生懇談会(安西祐一郎座長)が、小中高校の教科書の質と量の充実を図るためにまとめた教科書改革の素案の全容が7月26日に明らかとなり、そのなかにその内容が含まれていたものです。

これまでの教科書は、教室での使用を主目的とした分量の薄いものでした。今回の案はこれを「自学自習にも適した教科書」に性格を変えようとするのが特徴で、総ページ数を2倍に増やす必要がある、というものです。

私が中学生だった頃、教室での授業中に先生がもっておられる教科書は、生徒のものよりずいぶん分厚いものでした。ときどき生徒が質問すると、先生はその分厚い本のどこかを開いて、「……と書いてあります」と答えておられました。その度に、先生の本は凄いなあ、と感心していました。今から思えば、教師用のトラの巻だったのですね。子どもながらに「あの本、欲しいなあ」と思っていましたが、田舎の子ども達は、先生に見せて下さい、とも言えないまま終わってしまい、今では遠く懐かしい想い出の1つです。

しかし、今回の改訂は、「先生のもっておられる、なんでも分かるあの本」が生徒の手に渡るようにしよう、ということなのでしょうね。

授業で学んだことについての質問があるときや、授業の内容以上のことを知りたい時には、教科書を開いて自分で読めばよいということになるのですからありがたいものです。

懇談会は、学力低下を招いたと批判される「ゆとり教育」から転換を図る取り組みとして、7月28日から素案をもとに具体的な検討に入ると報道されています。頼もしく感じます。

08年8月11日 22,635
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