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いろいろと心配の多かった北京五輪も無事に終わってホッとしています。

最後の閉会式をみていて、単純な私は、これほど安定した豊かな国はそうないのではないかと思ったほどです。

開催前には世界の人々を心配させた四川大地震を乗り越え、大会そのものには大きな混乱もなく、北京五輪を閉幕にまでこぎつけた点を評価すべきだと思います。金メダル競争でも中国が圧倒的な強さを見せつけ、中国国民の団結の強さも感じさせました。

こうした明るい面をみて思いだすのは、1964年の東京五輪です。当時、私は中学3年生と多感な年ごろでしたから、いろいろなことを鮮明に覚えています。当時の日本は高度経済成長をなし遂げ、五輪の直前の1964年10月1日には東海道新幹線が開業し、高速道路の建設も進んで、1963年7月16日には名神高速道路の尼崎〜栗東区間71・1`が、日本初の都市間高速道路として開通していました。「順風満帆」とは当時の日本を表現するのにピッタリの言葉であったように思います。

華やかな面では、当時の日本も今の中国もかなり似ていると思います。しかし、現在の中国には当時の日本にはなかった多くの問題が存在することを認めないわけにはいきません。当時の日本でも学生運動は盛んでしたが、現在の中国の問題は遥に大きく、根の深いものだと感じます。

北京五輪開催の前中後でも新疆ウイグル自治区では警察官が襲われる事件が相次いておき、3月に騒乱が起きたチベット自治区では、厳戒下で住民の不満が高まっているままです。襲撃事件などを取材する外国人記者の拘束や取材妨害も続きました。当局は大会中にデモができる場所として北京の3か所を指定しましたが、住民が実際に申請すると処罰されたというくらい弾圧が続きました。少数民族の問題、言論や報道への締めつけは未だに続いているのです。中国は急速に市場経済化を進め、豊かさを手にしましたが、政治改革は後回しにされているといってよいでしょう。

五輪が終わった現時点で、都市部の不動産価格は年初から25%余りも下落し、上海株式市場の株価指数はピークだった昨秋の約3分の1に下落していると報道されています。また、都市や農村での強制土地収用や、党幹部の腐敗・横暴などへの住民の抗議は続いています。

経済の急速な発展に支えられて、北京五輪はこれまでの最大の大会として美しく終わったように見えますが、現在の共産党政権の正統性のよりどころである「経済発展」が保障されなくなると、政府は急速に信頼を失い、社会不安は一層強まることが予想されます。多民俗多言語国家である大国中国には、1960年代の日本とは比べものにならない複雑で大きな問題が沢山あります。世界の平和のためには超大国中国の健全は発展が不可欠です。世界の人々が注目し解決に協力しなくてはならない重要な問題です。

08年9月8日 22,282
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