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現在の医療制度の欠陥の象徴

8月21日、トラック運送大手セイノーホールディングス(岐阜県大垣市)は、傘下の西濃運輸などグループ企業31社の社員や扶養家族ら約5万7000人が加入していた「西濃運輸健康保険組合」について、8月1日付で解散したことを明らかにしました。理由として4月の高齢者医療制度改革に伴い、負担金が大幅に増えたことで事業継続が困難になったとしています。会社の景気が悪いわけでもないのに、倒産以外の理由で大手企業の健保組合が解散するのは珍しいことで、一般国民にはショックなニュースです。

西濃健保の解散により、これまでの加入者は国が運営し、中小企業のサラリーマンらが加入する政府管掌健康保険(政管健保)に移りました。

西濃健保によると、2007年度の高齢者医療関連の負担金は約35億8000万円であるのに対して、2008年度は約58億円となり、前年度比で6割以上も増加する見通しで、約23億円の赤字が見込まれたといいます。そしてこの負担増を補うには保険料率を月収の8・1%から、政管健保の率(8・2%)を上回る10%超に引き上げる必要があり、積立金を取り崩しても赤字が見込まれるため、西濃健保は事業の継続を断念したといいます。

このような話を聞くと、西濃健康保険組合の判断は当然のことだと納得できました。

この西濃運輸のストーリーは日本の多くの企業に当てはまる話だと思われます。このあと、第2、第3の西濃運輸が続出するのではないでしょうか。健保組合の解散が相次ぎ、政管健保への移行者が増えれば、国の負担も増加し、高齢者医療制度改革は雲散霧消してしまうのではないでしょうか。

私は以前から社会保障のためには社会保障目的に消費税を上げるしかない、とこの欄で主張していますが、新聞社の中では、読売新聞が私とほぼ同様のことを主張してくれています。8月23日付の読売社説のなかでも、「健保組合解散 限界超えた社会保障費の削減」という見出しで、「もはや、社会保障費の削減路線とは明確に決別すべきである。消費税を社会保障目的税として税率を引き上げ、超少子高齢社会に必要な財源を確保しなければならない」と結論付けています。実にスッキリした明解な論理だと思いますが、いかがでしょうか。「無駄を省いて……」などと悠長なことは言っていられない事態です。自民党総裁と民主党代表の選出に際しては、勇気を持って「国民に負担をお願いする」ことのできる人を選んでほしいと思います。

08年9月16日 18,740
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