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私は元来が田舎育ちの倹約家ですので、靴もいつも量販店で安いものを買っています。「倹約家」と格好良く言うよりも、ケチなのでしょう。

革靴も5000円前後のものが多く、運動用のシューズも1500円から3000円くらいのものが大部分でした。ところが、最近、ランニングシューズの高級品をはじめて買いました。ネット販売の中で「ランニングシューズ」と入れて検索したら、いっぱいヒットしました。

いろいろと見ているうちに、あのマラソンの野口みずき選手が契約している会社のものが目に入りました。野口選手が大変足にやさしい靴を作ってもらっていると新聞で読んだことがありましたので、ひょっとしたら自分もこの会社の靴を履いて走ったら楽に速く走れるのではないか、という妄想に取り憑かれたのです。

値段が9500円と高価なのが気になりましたが、たまにはいいか、と思って注文しました。3日後に手元に届きました。いつものように25aのものを注文したのですが、履こうとするとこの会社のものはずいぶん小さくて、趾が伸びないのです。とんでもない失敗をしたと思ったのですが、思いきって会社へ電話すると「交換します」、ということでほっとしました。さらに3日後に届いた25・5aの靴を履いて試走しました。

そうすると、なんと心地良いことか、楽に走り続けることができるではないですか。驚きでした。高価な靴はこんなにも快適な走りを提供するのかと感心しました。日頃、自分の心臓の病気の心配もあって長く走り続けないように気をつけていたのですが、この靴を履いてジョッギングしているうちに、つい1000bまで止まらないで行ってしまいました。膝にもまったく負担がかかっていないのを実感しました。

これまでケチケチ根性で靴を買っていましたが、これは大きな間違いであったことに気付きました。中学時代の自分の1500b走の4分42秒という記録をもう一度出そうと思って6年前に始めたランニングでしたが、この良い靴を使って始めていたら、5年前の心筋梗塞にもならずに済んだのではないかとまで思ったしだいです。安い重い靴で頑張って走っていたことも不必要な負担をかけていたように思われます。

この歳になってはじめて気付く自分の過去の愚行を反省しつつ、これからは靴代くらい、少し贅沢をとしても罰は当たらないだろうと思っている現時点の私です。この靴があれば来年の若潮マラソン10`クラスでの2分短縮は可能ではないかと思っています。ちなみに昨年よりも今年は20秒記録を短縮しています。順位は後から数えて6番目でしたが、来年は後から10番目よりも前に出るつもりです。

ささやかな楽しみができました。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

08年9月23日 16,024
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