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つい数週間前は、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)は、3密を避けられない新宿あたりの問題だと考えていた傾向があったと認めざるを得ないのですが、その後、感染が全国に拡大しています。専門家による政府の分科会は「多くの自治体で患者が増え、医療提供体制への負荷が蓄積している」と警鐘を鳴らすほどになりました。

感染者の増加は東京や大阪にとどまらず、福岡、愛知、沖縄などにも波及しました。さらに、新規感染者の半数以上は感染経路が不明といわれるまでになり、また、経路が判明した中では家庭内や宴会など会食の場、職場内での感染が増えていることが分かってきました。

当初、感染の中心は、東京の繁華街の飲食店に通う若者だったのが、今は全国の広い世代に及び、さまざまな場に広がりつつあり、本当に、いつ、誰がどこで感染していてもおかしくない状況になってきました。

こんな状況の中で、どうも心もとないのが政府の対応です。

政府は緊急事態宣言解除後、経済活動の再開を促してきて、観光振興策の目玉だといわんばかりに、「Go To トラベル」事業も前倒しで始めました。

経済復興を優先させた政策を実行した場合の感染再拡大はある程度予想できたことでしたが、このまま放置すれば、感染が高齢者に広がり、重症例が増えて医療崩壊を招きかねないとの声が日増しに大きくなってくるように感ずるきょうこのごろです。

政府の対応に不満を募らせる自治体の中には、独自の対策を打ち出すところも出始めました。

医師会など医療の現場からも「手を打たなければ日本が火だるまになる」との声が上がってきました。

新聞の中にも、政府の対応には危機感が感じられないと指摘するところも出てきました。毎日新聞は、菅義偉官房長官が「3、4月より重症者が少ない」として、緊急事態宣言を再発令することには消極的だと指摘し、「コロナとの闘いは、長期化が避けられない。経済を再生させるアクセルと、感染拡大防止というブレーキを、状況に応じて巧みに操る必要がある」と指摘しています。「今は、感染拡大の抑止を最優先する時だ」と結んだ社説には私も同意します。

さらに、Go To トラベル事業はいったん停止すべきだ、という意見にも同調します。

政府も必死にやっているのだから、理解してほしい、と言いたいのだろうと思いますが、今の政府の仕事ぶりを褒めてくれる人が少ないのは、世論調査結果にも反映されていると思います。コロナ禍は、安倍政権にとっても大きな禍となる可能性があります。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月10日20時00分 702

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