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最近では、腹腔(ふくくう)鏡や胸腔(きょうこう)鏡を使った内視鏡手術の一部が、ロボットを使って行われているというニュースを耳にされている方が少なくないと思います。正確にいうと、「手術支援ロボット」を使って手術がなされているということです。

しかし、このロボットはこれまで米国製で、Intuitiveという会社がつくっている商品名「ダヴィンチ」が市場を独占していました。

初期には競争相手として「ゼウス」という機種がありましたが、これをつくっている会社がIntuitive社に吸収されてしまったため、Intuitive社のダヴィンチが市場を独占する形になってしまいました。

従って、現在ではロボット手術とか、ロボット支援手術といえば、ダヴィンチを使った手術を指すようになりました。

ダヴィンチ手術は大変優れた手術と認められてきていますが、なにぶん機器が高額過ぎて、一般病院が入手するのは容易ではありませんでした。私が最近勤務したことのある病院では、総合南東北病院はもちろん装備されており、たくさんの外科手術がダヴィンチを使ってなされています。

千葉徳洲会病院でも、泌尿器科が前立腺手術はほぼ全例、ダヴィンチを使って手術しており、産婦人科、外科もダヴィンチを導入し、高度な手術を行っております。

亀田総合病院では諸般の事情からいまだに購入できない状態が続いていますが、大規模病院といえども、財政的に無理ならば、購入時期を延ばすことはあり得ることです。

しかし、最近、明るいニュースが入ってきました。

共同通信が配信した「国産初の手術支援ロボット メディカロイド、承認取得」というものです。

数年前から、日本の川崎重工業が国産手術支援ロボットを開発しつつある、といううわさは聞いており、日本人は皆、大きな期待を持っておりましたが、いつ実現できるかも分からないので、不安視しておりました。

今回のニュースでは、川崎重工業とシスメックスが出資するメディカロイド(兵庫県神戸市)が8月11日、手術支援ロボットの製造販売承認を国産として初めて厚生労働省から取得したと発表したというのですから、胸が躍りました。

現行は米国製が主流の市場に食い込む狙いで、2030年度の売上高1000億円を目指し、医療関係者に売り込む、といいますから、楽しみです。

ロボットは内視鏡手術を支援するもので、機械が勝手に手術をしてしまうわけではありません。患者の体に小さな穴を開け、内視鏡を挿入して体内の映像を確認しながら切除や縫合をする医師の執刀を4本の腕で支援するのです。ロボット名は「hinotori」というそうですから、懐かしい名前です。医師免許を持っていた漫画家の故手塚治虫(てづかおさむ)さんの作品「火の鳥」にちなんでつけたと報じられました。

今月にも販売を始めるといいますから、すぐに医療現場で使われる可能性があります。まずは前立腺がんの手術などで活用してもらい、順次対象を広げるといいますから、ダヴィンチのときと同じような展開になると思われます。第5世代(5G)移動通信システムを活用した遠隔手術の実現も目指すといいますから、夢が広がりますね。

なお、価格は非公表とのことですが、下馬評では、1億円といわれていましたから、普通の日本の医療機関が買える価格を実現してほしいです。

メディカロイドの浅野薫社長は神戸市内で記者会見を開き、米国製ロボットは医療関係者の間で割高感を指摘する声があるので、hinotoriを「病院経営に資するような形で提供したい」と説明したそうですから、私を含めて多くの医療者と同じことを考えておられるのだと思います。

価格ではダヴィンチに対抗できることは間違いないと思いますが、これまでにライバル社がロボット支援手術の普及に貢献してきたように、いかにして外科系医師を教育していくのかが、大きな課題になると私はちょっと心配しています。

とにかく、国産初の手術支援ロボットの誕生を喜びたいと思います。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月17日20時00分 653

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