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新型コロナウイルスに関する問題なら、日本中、いや、世界中が注目する昨今ですが、その中でも、多くの政治家の発言には、全国民が強い関心を持って耳を傾けます。

政府の方針がふらついているように見える中で、若手政治家の筆頭の一人でもある、吉村洋文大阪知事の発言、行動は実に小気味よいものとして、日本国民から評価されていると私は思っていました。

しかし、最近の「イソジン発言」と名付けてもよいような、私には不用意としか思えない言動には驚き、唖然(あぜん)といたしました。

これまでの大活躍が一瞬にしてフイになったように私は感じました。

これまでの慎重で、しっかりと準備をした上での理路整然とした発言内容は、いったい何だったのかと不思議に思えました。補佐役が交代したのかとさえ思えました。

コロナ問題が注目される中で、颯爽(さっそう)と現れた大阪の若大将は、一気に総理大臣候補の一人にもなるのではないかと思わせるほどの注目度でした。それに近い褒め方をした報道もあったと記憶しております。

うがい薬のイソジンガーグルで、コロナウイルスがコントロールできるなら、国民にとりこんなうれしいニュースはありません。世間の注目度の高さは、衝撃的発言直後に小売店の棚からイソジンが消えたという現象が証明しています。

全国的なニュースとして報道された吉村知事の発表内容でしたが、後のネットへの投稿の中には、「あれは大阪人特有の冗談やで。ウケとオチを狙った、笑いの一つとして、もっと気楽に見てやれよ」というのもあって、これまた感心しました。

そういう見方もあるのかと思って、起こった現象を見直すと、確かにあれは、吉村知事のウケとオチ狙いの半分冗談か、と考えれば、そう真剣に腹を立て、心配してやることもなかったか、と思えてきました。

新聞各紙は、吉村知事は初期段階の研究結果を「早く府民に伝えたい」と前のめりに発表した、新しい研究の発表形式としては極めて異例で、政治と科学の距離の取り方として配慮に欠けていたなどと指摘しました。

鳥取県知事や総務相を務めた片山善博・早大大学院教授(地方自治論)は、研究者側が単独で発表していれば、これほどの誤解や混乱の広がりは避けられた可能性があると述べています。

また、片山教授は研究の環境整備は支援するべきだとした上で、政治と科学の一体化に警鐘を鳴らしました。「政治家はサイエンスの領域に立ち入るべきではない。どんなにいい研究をしていても、政治的思惑があるのではないかと色眼鏡で見られる」という言葉は至言です。

一流の政治家としての業績も残し、学者でもある片山氏の言葉には今後とも注目していきたいです。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

8月24日20時00分 589

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