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10月12日から米国外科学会American College of Surgeonsに出席のためサンフランシスコへ来ています。16日にこちらを出発して帰国する予定ですのでかなり慌ただしいです。

前回サンフランシスコへ来たのはもう5年以上前だと思います。米国外科学会のInternational Guest Scholarに日本人としてはじめて選ばれたのが1993年で、このときがサンフランシスコ開催でした。この学会はサンフランシスコ、シカゴ、ニューオーリンズの3つの年で順番に開催することになっているのですが、賞をいただいたサンフランシスコ開催の時にはできるだけ出席するようにしています。とくにInternational Guest Scholarshipに選ばれた人は「高額の奨学金のもらい逃げをしないように、その後も学会に出席してその発展に貢献するように」と言われていたのですが、2003年に心筋梗塞と脳腫瘍で2回倒れてからは欠席が続いていました。従って6年ぶりのサンフランシスコということになります。

今回久し振りに来てみて驚いたのは、路上で寝ている人が多いということです。「ホームレス」という言葉に該当する人達でしょうか。1993年当時は美しいサンフランシスコの路上で寝ている人をみた記憶がありません。その後も、来るたびにサンフランシスコは奇麗な安全な街だと思っていましたので、今回はびっくりしました。サブプライムローン問題が引きおこした米国の経済悪化を反映した現象なのでしょうか。真っ昼間に繁華街の路上で寝ている人に対して、警察はいったいどういう対応をしているのだろうと思っていたところ、ちょうど2人の警察官が通り掛かりました。どうするのかとみていますと、まずは靴を蹴って反応をみていまいした。反撃してくる兆候がないことを確認したのか、その後、声をかけて起こしていました。そのあと、この人がどうなったかまでは確認していませんが、パトロールの警察官は、寝ている人が死んでいないことをまず確認することが第1の仕事であるように見えました。いきなり体を揺すって起こさないところが米国らしいなと思いました。日本では倒れている人を発見していきなり足(靴)を蹴ったりはしないでしょう。そんなことをしたら人権問題だと言われかねません。

路上で寝ている人以外に、ゴミ箱をあさる人とお金をせがむ人(beggar)がよく目につくようになりました。これも大きな変化だと感じています。

1991年にインドへはじめて行った時には路上で寝ている人と物乞いをする人をよく見掛けました(乞食≠ニいう言葉を使うと差別用語と言われかねないような気がして、避けました)。しかしインドの経済発展と共にそういった人達の数が激減してきているのを実感しています。

日本も経済状態が破綻してからホームレスの問題がクローズアップされましたが、世界中どこでも同じことが起こるのだと痛感しました。現代の若い日本人には実感できないでしょうが、私が子どもの頃は日本でも「乞食」と呼ばれる人がよくみられました。しかしそれは高度成長期に激減しました。働き口が増え、お金を恵んでもらう生活よりも、働ける人は働いた方が高収入であることが明らかになってきた時代背景があったと思われます。また豊かになった日本では社会福祉も充実してきて、働けない人にも十分な補助が与えられるようになって来たことも貢献していました(ここに過去形を使わなければならないところが残念)。ところが、最近の日本ではまた逆の現象が起きはじめたように感じられ忸怩たる思いです。

学会の合間に見たサンフランシスコの一光景からこんなことを感じていますのでご報告いたします。

08年10月20日 10,029
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