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銚子市立総合病院の診療休止問題をめぐり、市民団体が求めていた解職請求(リコール)に伴う住民投票(2009年3月30日)で、岡野俊昭市長(63)の失職が決まったことは、千葉県民に取り、大きな関心事だと思います。

市は公設民営方式での診療再開を目指し、指定管理者となる医療法人の審査を進めているようですが、再開のめどがたたないまま出直し選挙に入ることになりました。

リコール運動を進めた市民団体「何とかしよう銚子市政 市民の会」は「診療休止は公約違反であり、市民の声を聞かずに休止を強行した市長の下では地域医療の再生は不可能だ」と訴えていました。同会は市長選の候補者の擁立を探っていましたが、4月1日、茂木薫(もぎ・かおる)代表が立候補を表明しました。

これに対し、医師不足の深刻化で「病院存続」の公約が果たせず失職が決まった岡野俊昭市長は「反対運動ばかりでは将来プラスにならない」と診療科目や病床数を縮小し、民間病院などに経営を任す方向で有識者を集めて検討を進めています。これは多くの自治体病院が行ってきた対応と同じです。

これまでの経過を見ていますと、市長は公約違反だとして責められっぱなしのまま住民投票に入り、大差で敗れました。メディアの報道内容からは市長自身も必死に市民病院存続のための努力をしてこられたのが分かります。正直に言って、他の人が市長をやっていたら市立病院の経営がうまくいったのかというと、うまくやっていけたはずだと自信を持って言える人はいないのではないでしょうか。

昨年末に厚生労働省がまとめた医療施設動態調査によれば、自治体や日赤などが運営する公的医療機関の数は、平成19年に1325病院で、前年に比べて26病院(1・9%)減っています。また、「全国の自治体病院の75%が赤字経営に陥っている」という指摘もありますし、いろいろな発表を見ても8割近くが赤字のはずです。自治体病院の経営は一筋縄ではいきません。

こんな中、4月8日、出直し市長選に、同病院の勤務医だった松井稔氏(45)が立候補する方針を固めたというニュースが飛びこんできました。松井氏は取材に「市立病院を独立行政法人化し、市や議会の影響を受けにくい病院として再生させたい」と話しているとのことです。臨床現場を知りつくした医師が、「医師としての経験豊富な自分が、市長として医療崩壊をくいとめよう」と考える姿勢は素晴らしいものだと思います。臨床現場と政治、管理の仕事とは異なった面も多くて大変だと思いますが、是非、頑張って頂きたいものです。

銚子市が財政難であるうえに、医師不足、看護師不足という大きな問題があり、市立病院の問題解決は容易ではありません。しかし、住民に安定した医療を提供するのは自治体の責務です。銚子市は幅広く意見を聴取して、病院経営立て直しの方策をなんとか探り出してほしいものです。私自身に今、再建を依頼されたとしても残念ながら妙案が浮かばない状態で忸怩(じくじ)たる思いです。

09年4月13日 10,305
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