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診療報酬改定・報酬加算「看護必要度」に転換 「7対1」一律増を廃止……厚労省方針

2007年10月4日のこんな見出しの記事をみて驚きました。日本の医療機関が厚生労働省の朝令暮改の指示により、まさに「振りまわされている」のを実感しました。

厚生労働省は10月3日、「患者7人に看護師1人」の手厚い看護配置基準(7対1)を満たす医療機関の収入を一律増としている診療報酬体系を廃止し、がんの化学治療に取り組むなど、患者にとって「看護必要度」の高い医療機関でなければ報酬加算を認めないようにする2008年度診療報酬改定方針を、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)の小委員会に示したというのです。2年前に決めて実施したばかりのことをもう廃止するというのですから驚きです。

厚労省は2006年度改定で、7対1の観護配置基準を達成した医療機関の入院基本料を一律に増額しました。手厚い看護をしているから御褒美をあげようという政策でした。そのため各病院はこの基準を満たそうと必至に看護師集めを始めました。

当然の事ながら、国立大病院など大病院が看護師の大量確保に乗り出しました。その結果どうなったかと言いますと、一部の地方、中小病院が深刻な看護師不足に陥りました。毎日新聞の言葉を借りると、「故意に病床数を減らして7対1とし、軽症患者に過剰看護をする病院も現れた」という事態にもなりました。

このため、同省は、7対1加算の対象を真に手厚い看護が必要な患者が入院する医療機関に限定することにしたというのですが、具体的には、患者の看護必要度を点数化し、総点数が一定以上の医療機関のみ収入が増えるようにするというのです。こう言われても、実際のどのように運用されるのか、私にはまだピンと来ません。

この「7対1加算」は手厚い看護による入院日数短縮を狙った2006年度改定の目玉の一つだったはずですが、収入増を狙う大病院が大量の看護師を抱え込むなどの問題を引き起こし、2年で見直すことになったのです。必至に看護師集めに奔走させられた多くの病院関係者にとっては、いったいあれは何だったのか、と虚しい結果になりました。

それにしても厚生労働省はよくもこんなに簡単に方針を変えて日本の医療機関を翻弄してくれるものだと怒りを覚えます。厚生労働省の朝令暮改政策が医療崩壊を助長するという絶望的な事態です。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

07年10月15日 11,340
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