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今月11日に開催された世界ボクシング評議会(WBC)フライ級タイトル戦で挑戦者の亀田大毅(協栄)が反則行為を繰り返した問題は、ここのところわが国での大きなニュースのひとつとなっています。

私もたまたまテレビをつけたら放映中だったので観ていました。実況中継をするTBSのアナウンサーの言葉を聞いていると今にも亀田がノックアウト勝ちを収めるように聞こえるのですが、どうも内容と一致しません。素人の私には分からないところがあるのだろうと思っていましたが、途中でボクシングなのかプロレスなのか分からない場面が出てきて、これはいくらなんでも亀田の負けにしないと国辱ものだと思えてきました。

判定は常識的な結果になり、ほっとしました。実が以前、兄の興毅選手のタイトルマッチで、明らかに亀田興毅が負けなのに勝ちの判定が出て忸怩たる思いをしたことがあったので、また不正判定と言われる結果になりはしないかと心配したのでした。

亀田兄弟の試合があるたびに大変な関心が集まり、ボクシング協会も試合を放映するテレビ局も大きな利益を得ていたと思われます。しかし、あの異様な振る舞いにはいつも疑問を感じていた国民が多かったことでしょう。私も「なんじゃ、これは!」と思いながらも、これは客集めのショーと思えば理解できると考えてきました。

しかし、今回の試合の結果からは、亀田父子は本当に人の道から外れた、おかしな人達であったと認めざるをえなくなりました。試合の直後にチャンピオンになんの挨拶もせずにさっさとリングを去っていく姿をみて、これは常識人とはかけ離れた親子だと感じました。

その後のマスコミおよびボクシング協会による亀田父子批判は、私の予想を超えた厳しいものになって来ました。両者ともに亀田人気で稼ぎまくってきたくせに、その変わり身の速さに驚いています。TBSはこれまでの行動をまったく忘れたかのように「亀田批判、内藤礼讃」の報道活動を始めています。

亀田父子に較べて勝者の内藤選手の人間性の高さが光っています。かつてはいじめられっ子であって、それを克服するためにボクシングを始めたという話は多くの子ども達に勇気を与えています。彼自身もいじめられっ子達に励ましのメッセージを送っていたのを観ました。亀田選手が謝罪したことを評価し、素質のある選手なのでこれから頑張ってほしいと答えています。なんと寛大な心の持ち主でしょう。試合直後に亀田選手の行動について感想を聞かれて「もう終わったことですから」とアッケラカンと答えていた姿には感心しました。

先輩の内藤選手の真心に答えるためにも、亀田選手が人間として立ちなおり、一から修業をしなおしてくれるように祈っています。また、私達国民も亀田父子の行動をこれまで許してきたのみならず、歓迎し利用さえしてきたことを強く反省しなくてはなりません。

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加納宣康 昭和24年8月4日岐阜県生まれ。現在、亀田総合病院特命院長補佐、主任外科部長、内視鏡下手術センター長、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大学名誉客員教授、帝京大学医学部外科学客員教授

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

07年10月22日 10,066
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