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房州低名山へのいざない

度祗巌山・高倉山・神楽石山

ベテラン・川崎勝丸さんから神楽石山(かぐらいしやま)という名の山が鴨川にあると教えられた。尾根筋には二等三角点峰の度祗巌山(とびいわやま)、高倉山(たかくらやま)と3山が並ぶ。登り口にはもうけ神社。尾根筋の古道を歩く5時間半ほどのコース。ベテラン向けだが、林道からショートカットも可能だし、ひとつの山だけでもいい。装備をしっかりして歩きたい。

ランク★★★
山道を彩るマンリョウの実
山道を彩るマンリョウの実

鴨川市の東条小学校前の県道を北に折れ、山塊に向かって北上すると、集落の中にもうけ神社が鎮座する。クルマは置けないので、周辺の路肩など、迷惑にならないよう心がけたい。もうけとは物を蓄える意という。本殿は間口6間ほどの立派な神社で、境内にはクロガネモチの大木がある。「儲け」て「金持ち」。なんだかめでたい神社である。

鎮守の杜の静かな社殿を左に見て、林道に入る。神社隣接の民家を過ぎると、コンクリ林道直前に畑の切れ間から左へ上る道が出る。ここが、登山口である。

幅の広い古道のような道が広がり、きつい上りを過ぎると、金毘羅宮の跡になる。ここまで15分。苔むした石段があるが、すでに崩れかけている。宮跡には石灯篭や手水鉢もあるが、すでに信仰の対象ではなくなっている。このピークが金毘羅山(標高170b)。

尾根筋まで登って、ふたたび古道へ出る。堆積物は多いが、道はある。30分ほど歩くと、標高241bのビューポイントに出る。南側の鴨川の市街地が見下ろせるが、残念ながら杉が植林され、あと数年で見えなくなるだろう。

さらに尾根筋を歩くと、20分で再びビューポイントになる。こちらは岩肌に草が張り付くような場所で、南側の眺めが最高である。鴨川松島、仁右衛門島など良く見える。嶺岡山系の諸山から鋸南の人骨山、津森山、そして安房高山までの房州低名山がずらりと並ぶ。絶景の「東条展望台」である。

ルート上は所々、岩にステップが切ってあり、古くからの道であることが分かる。房総山の泰斗、内田栄一さんによれば、この古道は「東条みち」と呼ばれ、安房と上総を結ぶ街道であったという。

東条展望台を過ぎると、左へ急登する場所がある。目印がなく分かり難いが、よじ登っていくと、ロープが下がっているのでこれが目印だろうか。きつい上りを杉の木につかまりながら登る。東条展望台から15分で広いなだらかなピークになる。この頂が度祗巌山(同277・7b)である。二等三角点が鎮座する。国土地理院では「和泉」としている。とびいわとは、珍しい名だが、内田さんの著書「房総山岳志」では「木地師に関連する名」だという。

度祗巌山の雄姿(高倉山から)=鴨川市
度祗巌山の雄姿(高倉山から)=鴨川市

度祗巌山から西へ尾根を下り、高倉山(同213b)を目指すが、尾根が広くて分かり難い。いったん迷ったものの、西へ下る支尾根を探し、高倉山を目指す。ルート上の巨岩を左にトラバースして、さらに露岩帯を登ると、やがて草に覆われたピークになる。ここが高倉山。ほぼ360度の視界があり、郡界尾根の諸山が眺められる。眼下には鴨川カントリーが見える。東に大きく座るのが度祗巌山だ。

ここで昼食を食べる。この山は地元でも知られておらず、内田さんも房総山岳志の中で「ほとんど人の入らない秀峰」としている。

この秀峰を折り返し、露岩帯を慎重に戻る。度祗巌山ピークから古道へ降りて、しばらく東条みちを北上する。古道を歩いて30分ほどで、ルートは林道西嶺線へ出る。コンクリ林道を南へ戻る形で山を下っていく。東条みちは、ほぼこの林道と平行する形で走っているから、林道から直登するコースも選べる。高倉山も度祗巌山も難しい位置にあるが、この古道を歩くだけでも楽しいだろう。

林道を歩いて10分で、切割になる。切割の南側のカーブミラーを目印に、急登する。目指すは神楽石山である。

神楽石山のピーク=鴨川市
神楽石山のピーク=鴨川市

露岩帯があって非常に危険だが、ここも眺めがいい。岩を過ぎてさらに細尾根を東に進む。杉が植林された目の前が神楽石山だ。道なき道を杉の木につかまって登る。岩から10分で杉林のピーク(同268b)になる。ピークのすぐ先に大きな平たい岩があって、これが神楽石ではないかという。

川崎さんによれば、修験道の山で修行しながらこのピークを目指し、山頂で神楽を踊ったのではないかと推測される。

神楽石からは、北側の妙見山が良く見える。清澄寺の仏舎利塔が陽光に光る。

来た道を慎重に降りる。そのまま林道へ出て、神社へ戻る。途中、小さな滝があって、心が癒される。スタートからちょうど5時間半。ショートカットしたり、直登すればもっと短くなる。林道北側から登って戻るもの楽しいだろう。

くれぐれも安全に留意し、ベテランと一緒に歩きたい山だ。

(2008年12月12日登山)

【写真説明】山道を彩るマンリョウの実

【写真説明】度祗巌山の雄姿(高倉山から)=鴨川市

【写真説明】神楽石山のピーク=同

09年2月16日 36,858
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