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山中激歩連載【第9回】

(9)宇田トンネルから半導体工場上へ

宇田トンネル上のルートは尾根筋で、歩きやすい。トンネル手前に115・5メートルのピークがあって、ここに「大竹」三等三角点がある。宇田坂分岐から25分で、三角点に到着。

三角点峰には、「村内安全」と刻まれた石宮があるが、そのほかには何もなく、どの村が建立したかも不明だ。宮は宇田方面を向いているので、宇田村の建立だろうか。三角点峰の下には、小さな建物があって、これが神社跡だという。かなり広い面積なので、かつては立派な建物があったことだろう。

三角点を後に、南へ向かうと眼下に黄色いセンターラインが飛び込む。これが県道館山千倉線で、すぐ南をJR内房線が走っている。車の走行音が鳴り、路面とこの尾根がそれほど離れていないことが分かる。ちょうど電車も走行してきて、鉄路の音が上空に響いた。宇田トンネルの上を歩く機会があるなんて、驚きである。

トンネルを過ぎて10分ほどで、東電の高圧線鉄塔になる。「南房線16」と表示がある。この鉄塔の角を曲がるようにして、緩く登る。杉林の中を歩き、ここで昼食となった。

休憩後、西へ向かって歩く。ここから先は、踏み跡が古く、半ばやぶ化している。先導の川崎さん、菅野義信さんが、鉈鎌でやぶを切り拓きながらの進行である。

高圧線鉄塔を過ぎると、ここに六十六部供養塔がある。六十六部とは、全国を歩く巡礼者で、省略して六部とも呼ばれる。宗教に殉じ、この山中で没した旅の六部がいたのだろう。手厚くこの地に葬られ、後世に供養碑となって残る。また、すぐ近くには「嘉永元年九月四日」と刻まれた馬頭観音もある。嘉永元年は、1848年である。江戸時代には、この道を馬が闊歩し、六部も旅したことになる。21世紀のいま、道は忘れ去られようとしている。なんだか、寂しい感じがする。

しばらく行くと、宝貝からの合流地点となる。ここも広い三差路で、かつては頻繁に人が歩いたであろうことが、想像される。

合流から15分で、半導体工場上の三角点峰に着く。「青山」三角点は三等、標高は128・3メートル。ここが白浜城跡から北上した古道との合流点である。三角点峰からの視界はないが、すぐそばの広域農道開削現場からの北側の眺望はいい。御殿山連山と経塚山、遠くは嶺岡愛宕山まで見渡せる。しばし、景色を楽しんだ後、稲村城跡を目指して北上する。

稲村城跡までの道は、すでに連載の6回目で紹介しているので、ここでは省略する。

九重駅を基点に、ぐるりと周回する大きな古道がある。歴史上の必見ポイントもあるので、体力と同時に、知力も働くことになる。

(つづく)

【写真説明】115・5メートルのピーク「大竹」三角点

【写真説明】路傍にたたずむ馬頭観音

07年7月12日 54,983
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