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ひっそりと咲くヤブミョウガの花

山中激歩連載【第24回・最終回】

(24)おわりに

房総半島の最南端・白浜城跡から房総の屋根・郡界尾根まで、半島ほぼ中央の尾根筋を北上する旅。さすがに1日では無理なので、のべ6日間かけての山中激歩だった。

房州低名山の連載を終え、房州温名湯の掲載に入ったころ、わが山の師・川崎勝丸さんから「忍足さん、温泉ばっかり浸っていると、ふやけちゃうよ」と連絡があった。その川崎さんの口から「房州を縦断する立派な古道がある」と聞かされたとき、少し心がざわめいた。山は終わって、いまは温泉なのだ。そう思ったが、低名山への思いも、後ろ髪を引かれるように残っていた。

季節は5月から6月に移ろうとしていた。梅雨どき。もう汗ばむ時期である。そこにはヘビもハチもいる。そんな時期に山へ入って大丈夫だろうか。が、川崎さんの誘いも断りがたい。ベテランが一緒なら安心だろう。そう結論付けて、白浜へ向かった。

何もかもが杞憂だった。梅雨空で汗ばんだが、ヘビもハチもいなかった。木陰を歩けば、風が涼しい。人知れぬ尾根筋に、一条の光明の筋がある。時代背景は異なるが、白浜から館山、丸山、三芳を通って平群、佐久間へ抜ける古道。全行程を6つに分け、両端に車を置いての歩行だ。古道には車が入れない。尾根へ登り、ひたすら歩いて尾根を下り、車で戻る。これを6日間繰り返して、三浦三郎山へ着いた。

三浦三郎山で記念撮影。左から菅野さん、忍足、川崎さん、山口さん

1日7時間歩いた日もあるし、途中で音を上げた日もある。何しろウルトラ・スーパー・ロングハイクなのだ。それでも案内の人たちは優しかった。ときに路傍の可憐な花に励まされ、ときに先輩に激励され、山を歩いた。ひどいやぶは、鉈鎌で刈り拓きながらの前進だ。記者はただその後を従っただけ。何より大変だったのは、案内していただいた3人の大先輩たちだろう。

連載したルートは、ハイキングコースではないし、まだ一部の愛好家しか知らない道だ。この連載もハイキングガイドではない。もっと大勢の人が歩けば、道は固まり、やぶは消えることだろう。歴史的にも貴重な要素を秘めた道でもある。このままやぶに埋もれ、歴史から消えていくのを座して待つのは、この時代を生きる者の一人として忍びない。

まだまだ未整備のルートだが、一部はショートコースとしてハイキング道になりそうだ。もっともっと多くの関心が、この房州古道に集まることを祈念し、この連載を閉じよう。

協力してくれた山の先輩、川崎勝丸さん、山口一嘉さん、菅野義信さんに深甚なる謝意を捧げつつ。

(忍足利彦)

【写真説明】ひっそりと咲くヤブミョウガの花

【写真説明】三浦三郎山で記念撮影。左から菅野さん、忍足、川崎さん、山口さん

07年7月30日 75,522
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