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歴史を感じさせる白狐の切割

【第4回 岩尾根上で危機一髪】

(4)狭い岩尾根へ

開削された林道口は周囲の山より低くなっており、ここから急な上りとなる。杉林の中の道なき道を足を踏ん張って登る。国土地理院の2万5000分の1地図で、標高228bの表示があるピークへ登る。ここも富津市と鋸南町の市町境であり、急斜面にも境界杭が打たれる。きつい上りをぐっとこらえて足を動かす。

この先はアップダウンを繰り返す狭い尾根になり、踏み跡が続く。ときに狭いやせ尾根、ときに岩尾根になる難所もある。ベテランの案内がなければとても歩ける場所ではない。単独あるいは素人では、非常に危険である。

しばらく行くと、狭い岩尾根が現れる。ここから先は、こうした露岩のやせ尾根が続く。両側は切り立ったような崖。一歩誤れば、命がないかもしれぬ。

ザイルを渡して岩肌を降りる

人がひとり、やっと歩けるだけの狭い尾根を慎重に歩く。正面に座る嵯峨山を目標に、三点確保で岩を進む。これだけの露岩帯は房州には珍しいだろう。

林道口から30分ほどで、上白狐への切割に出る。江戸期、あるいは明治期まで使われていたか。富津市の白狐川上流の上白狐集落と鋸南町を結ぶ古道の切割である。現在は廃道で、人の踏み跡もない。切割は高さ3bほど。人力で岩を削ったのであろう。垂直の岩肌に歴史を感じさせる。切割の南北はすでに土砂に覆われ、昔日の面影もない。

切割をトラバースするように回る。ここからは、ザイルを使う難所になる。直下に降りるような岩肌を下る場所があるが、さすがに危険なので、川崎さんがザイルを渡した。山口一嘉さんが先行して降り、待ち受けてくれる。後ろ向きでザイルを頼りに慎重に降りていく。V字のような尾根の底を過ぎると、さらに同じ規模の上りがある。

ここでもザイルが渡され、慎重に登る。実はこの岩尾根の途中で、記者(忍足)はうっかり尻もちをついてしまった。どすん。人ひとりの幅しかない狭い岩尾根での尻もち。両側は切り立った谷。そのまま谷に落ちれば、命はなかっただろう。川崎さんから烈火のごとく注意された。申しわけありません。

岩尾根をザイルでよじ登る。切割から35分で、岩山のピークに到着。広さは10坪ほどか。洗濯板のようなタテの地層が浮かぶ。ここで昼食となった。

生きた心地がよみがえる。 (つづく)

【写真説明】歴史を感じさせる白狐の切割

【写真説明】ザイルを渡して岩肌を降りる

08年1月8日 20,365
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