企画・エッセイ » 記事詳細
嵯峨山の三等三角点

【第8回 スイセン眼下の尾根筋】

(8)嵯峨山へ

スイセンピークからの南東側の眺めは最高だ。富山や伊予ヶ岳、御殿山などの低名山が並ぶ。取材日は曇りで、各座の輪郭が水墨画のように浮かぶ。深山幽谷の趣きがあっていい。

富士講の石宮があるのは、この山頂から富士山が見えたからだろう。現在は登るのもハイカーだけだが、かつてはふもとからこのピークに登って、信仰の場としていたはずだ。その景色も東側は樹木で遮られている。

昨年7月連載の「房州古道を往く」では、ルート上にたくさんの石宮があり、各所が信仰の道であることが感じられたが、この郡界尾根にはここまで、そうした文化の薫りがない。スイセンピークの石宮が初めての信仰対象物である。

スイセンピークとは、嵯峨山の支尾根の西側のピークで、山頂までスイセンが植えられていることからの命名だ。ふもとの篤農家が、この急斜面を耕し、スイセンを植えたのである。その苦労に頭が下がる。花の時期は谷から吹き上がる風が、スイセンの芳香を運ぶ。素晴らしい場所である。

ここから嵯峨山までは、鋸山と連なる尾根の特徴ある岩尾根がつづく。アップダウンを繰り返しながら、東へ向かう。富津市と鋸南町の市町境でもあり、ルート上には境界石が配置されている。

細い尾根だが、ところどころにロープが渡され、安心感がある。これも地元愛好家の配慮だろう。

スイセンピークから20分で、嵯峨山の山頂に出た。三等三角点峰で、標高は315・5b。雑誌やスポーツ紙で紹介されて「スイセン山」などと呼ばれ、近年は人気のある山である。山頂は5坪ほどで、ピーク標識と三角点があり、地すべり地域のコンクリート標識が置かれる。周囲は樹木で眺めはなく、眺望の面ではスイセンピークに劣る。

この山頂で、地図を広げてここまでのルートを確認する。2日目の尾根歩きは始まったばかりである。(つづく)

【写真説明】嵯峨山の三等三角点

【写真説明】嵯峨山山頂の標識

08年1月12日 19,018
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved