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標高145bの小さな峠

【第10回 志駒川に人里の気配】

(10)志駒川へ

昼食の大休止を終え、東側に向かう。路傍にはガマズミの赤い実がなり、季節を知る。小さな赤い実を口に含めば、ほんのりと甘酸っぱい。いまどき、この野の実を食べる子どももおるまいが、昔はこの実を食べて、野を歩いたものである。

栽培されたスイセンの斜面を見て、富津市側に下る。コンクリートの急な下り坂である。時折、ナバナの畑があり、水田もみられる。畑には電気柵やトタン板がめぐらせてあり、イノシシの被害が甚大であることが分かる。あちこちに檻わなが設置され、米糠がえさとして置かれる。尋常な眺めではない。この地でイノシシの被害と闘いながら、営農を続ける農家に対して頭が下がる思いだ。野生との知恵比べなのだ。

コンクリートの上りを歩くと、やがて小さな峠となる。地図の標高は145b。比較的新しい開削で、ケンチブロックも新しい。この峠を越えると、富津市山中だ。地すべり対策の施された小川が、田島川。山中の集落が出て、ここでようやく、ひと気が漂うようになる。

志駒川を渡る田島橋。久しぶりの集落だ

峠から5分で県道上畑湊線に出る。車が走る道に出たのはこの日のスタート以来、3時間ぶりだ。

この県道を横断すると、正面に志駒川が流れる。この川を渡る小さなコンクリート橋が田島橋だ。橋のたもとには「天神社入口」の看板がある。

橋の上から志駒川を眺める。すぐ下は田島川と東沢川の合流地点。小さな十字峡である。取材日はまだ紅葉には早い時期だったが、この橋のそばに巨大なモミジがあって、これが色づけば絶景だろう。志駒川周辺は「モミジロード」として名高いから、時期になったらこのあたりをハイクすれば楽しいことだろう。

橋を渡ってコンクリート道を緩く登る。何軒かの民家をみて、右に犬のいる家を過ぎれば、ここから先は山道になる。振り返って県道あたりを眺める。モミジの木があちこちに植わっていて、この周辺がモミジロードであることが分かる。

(つづく)

【写真説明】標高145bの小さな峠

【写真説明】志駒川を渡る田島橋。久しぶりの集落だ

08年1月15日 20,203
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