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六地蔵が安置された木之根峠

【第13回 古道の薫りの木之根峠】

(13)嶽神ピークへ

尾根歩き3日目は、富津・鴨川市境の県道富津館山線から始まる。引越集落から木之根峠を越え、郡界尾根へ入っていく。

県道沿いのコンクリート坂道を登る。最初からきつい上りである。落ち葉を踏みしめながら歩くと、左にカーブ。その先にすでに主のいなくなった農家が出る。間口5間半の立派なつくりだが、いまは誰も住んでいないのだろう。雨戸が閉ざされ、人の気配はない。この民家手前を右に登る細い道があって、この泥道を登る。しばらく歩くと「建設省」のコンクリート杭があちこちに出始める。この山道が市境であるのだ。県道から15分で、広くなった峠に出る。ここが国土地理院の2万5000分の1図にも載る古道の木之根峠である。

南房総市高崎にも同名の峠があるが、高崎は「木ノ根峠」。こちらは漢字の木之根で、ハイカーの間では「漢字木之根」「カナ木ノ根」と、明確に区別されている。

県道が開削される前までは、実際に人が歩いたのであろう。富津市豊岡と鴨川市金束を結ぶ古道である。

富士山型の「嶽神」宮

峠の高まった場所に、六角形の石に彫られた六地蔵が安置され、地元の人が築いたであろう木の階段もある。信仰の気配はないが、かつては地元の人が通ったに違いない。古道であることを示す石造物がもうひとつあった。六地蔵の斜め下に、自然石が安置してあって、表面は「草露近右又■」と読める。行路病者の供養碑ではないかという。この峠の草露に濡れ、倒れた旅人を地元の人が弔ったのだろう。それほど歴史のある古道ということだ。

峠には広場登山クラブの小さな標識があって、この標識に従って東へ向かう。木漏れ日の雑木林を歩くのは気持ちのいいものだ。

峠から15分で、小さなピークに出合う。地図上では標高236b。この峰に巨大な石碑がある。赤みがかった三角形に大きな文字で「嶽神」と彫られ、その上にヤマ型。明治13年4月の銘があるから、時代的にはそれほど古いものではない。文字も風化しておらず、保存状態もいい。なにより石そのものが富士山の形をしている。近くには馬頭観音、大日如来と彫られたハンバーガー型の丸い石もある。

嶽神碑には「金束村」の文字が読める。地図には金束本郷からの道があるので、かつてはこのピークに、ふもとから信仰のため登ったのだろう。いまは訪れる人もないが、立派な石碑ゆえに、この頂を嶽神ピークと呼びたい。

(つづく)

【ハイキングガイドではありません】

【写真説明】六地蔵が安置された木之根峠

【写真説明】富士山型の「嶽神」宮

08年1月18日 14,861
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