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豊岡三角点のそばの大山祇命の石碑

【第15回三郡山へ】

遥か遠くに霞む鋸山

大山林道は比較的新しく開削された林道で、この三角点峰の東側ぎりぎりに南北に通る。そのせいでこの峰の東側は切り立った崖になっていて、長狭街道からもこの峰がよく分かる。

林道からすぐに山に取り付く。非常に急な斜面で、足場も悪い。潅木に手をかけ、ストックを活用しながらの上りである。四苦八苦しながら登る。急登なので息も絶え絶えだ。斜面と悪戦苦闘しながら15分。ようやくピークが現れる。標高347・9bの三等三角点(三角点名は豊岡)が鎮座し、その後ろにサカキの木。木のすぐそばに石碑がある。表面に「大山祇命 宇藤木」と彫られている。

大山祇命(おおやまつみのみこと)は、全国の山を管理する総責任者≠ナある。イザナギ、イザナミ2神の子。木花咲耶姫(このはなさくやひめ)はこの神の娘。山をつかさどるのはもちろん、水源涵養にも大きな力を示したので、水源管理の意味合いもあるのだ。

宇藤木は富津市側の大字。このピークは湊川の源流部でもある。小さな流れは、戸面原ダムを経由し、東京湾に注ぐ。宇藤木地区の人が祭った大山祇命と理解していいのだろう。周囲にはモミ、ツガの原生木があって、ピークは10坪ほどの広さ。このピークを北側に下るが、道らしい道がないうえ、急な下りで、記者(忍足)は滑落した。けがはなかったが、非常に危険な頂である。

三郡山尾根から東を望む。遥かに鋸山が浮かぶ

ピークを降りた先が、林道の広場になっていて、ここで昼食となった。北側に八良塚、高宕山を眺めながらのダイナミックな昼である。

大休止後、出発。大山林道は南に下り、さらに尾根筋にそって東に伸びる。ここから地図上の距離で三郡山までの1・1`ほどは、広い林道を歩くので面白みは少ない。杉の落ち葉を踏みしめながら東へ向かう。

25分ほどで、三郡山の登り口になる。「ごみ捨て禁止 かけがいのないみどりを大切にしましょう 千葉県」の看板が目印で、小さく「三郡山入口」の白い標識もある。

登り口からは木の階段状になっていて、足元も安心だ。杉林の暗い中、上を目指す。5分で山神社の石碑。「官林払下記念」や昭和12年の文字がある。この石碑を右に見て、少し急な坂を登ると、ここが三郡山のピーク。標高は337b。長狭郡(現・鴨川市)、天羽郡(現・富津市)、周准郡(現・君津市)の3郡境であることからの名で、山頂につながる尾根は、三脚のように三方に伸びている。

その北側支尾根からの眺めがいい。取材日は好天に恵まれ、横浜のランドマークタワーまで見通せた。西に目を転ずれば、遠く鋸山の三角錐と嵯峨山の頂が見える。ここまで丸3日間かけて尾根を歩いたわけだ。遥か遠くに霞むような2座の距離に、我ながら無謀な尾根歩きだと思う。

三郡山山頂には朽ちかけた山頂標識と境界杭があるが、他には何もない。3つの郡の境で郡界尾根の主峰のひとつなのに、地図には山名の記載もない。

(つづく)

【写真説明】豊岡三角点のそばの大山祇命の石碑

【写真説明】三郡山尾根から東を望む。遥かに鋸山が浮かぶ

08年1月21日 14,991
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