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美しく落ちる大滝=南房総市川上

[第6回]川上の大滝(南房総市川上)

名峰直下に潜む「十滝」

平久里川上流域から県道を岩井方面に向うルートが、主要地方道鴨川富山線(通称・二部街道)だ。北側が嶺岡山系、南側が富山の山塊にはさまれた細長い平地が続く。大滝は、嶺岡山系に近い奥に位置する。伊予ヶ岳西側直下、岩井川の源流にあたる場所である。

二部街道の川上青年館の角を北側に入る。コンクリートの道を上ってくと、右に分岐があるのでこちらへ進む。民家を左手に見ると、やがて正面に房州のマッターホルン、伊予ヶ岳が見える。

道路を右手に下るが、民有地なので断って降下したい。手前の赤道から下りる場所もあるが、上流に砂防堤が築かれ、遡行を邪魔する。何とか降下点を探したいところだが、案内人がいなければ諦めたほうがいい。

川底に下りて、浅い流れの中を歩く。ごみは少なく、ごろた石が続く。途中、二股になり左に細い流れが落下する。一筋の小さな滝。これを左手にみて、右股へ行く。10分ほど歩くと、最初の滝が出現する。幅は3b、高さは2bほどか。この源流部も小さな滝が連続する連瀑である。

5分ほど歩くと、細長い糸のような滝に出合う。さらに遡上すると15分ほどで、大きな滝が出現する。これが川上の大滝である。

赤滝の様相を見せる中滝=同

高さ10b、幅は8bほど。扇状に広がって流れ落ちる立派な滝で、滝つぼ直上には3条の硫黄の流れがある。この源流部分にはこうした硫黄の湧出場所が多く、この大滝からも湧き出ている。

内田栄一氏は著書「房総 山と峠の物語」(崙書房)で伊予ヶ岳の語源を「硫黄ヶ岳」と独自の解釈を試みているが、この源流部をみれば、あながち空論でもない。硫黄が噴出する名所なのだ。

大滝の前でしばしたたずむ。飛まつが漂い、冷気が流れる。ここだけ別世界のようでもある。

大滝を注意してよじ登る。滑るので三点支持を忘れず、沢登りを続ける。

途中、危険な箇所があるので、左へ高巻きする。トラロープが設置してあるので、ここへ分け入っている人もいるのだ。

小さなナメ滝の上に、長さ20b、幅5bほどの長い滝が出現する。水はS字状になって岩肌を滑り落ちる。豪快である。

これを注意して越えると、高さ8bほどで2段になって滑り落ちる扇状の滝が出る。これが中滝と呼ばれる滝だ。水流に硫黄成分があるのか、岩肌は赤くなって「赤滝」の様相だ。ここでも飛まつ浴をして、しばし日常を忘れる。

川はやがてやせ細り、ここが源流となる。地図で確認すると、伊予ヶ岳雌峰のすぐ西直下である。連瀑は全部で10ほどあり、全体で「十滝」とも呼ぶという。

【写真説明】美しく落ちる大滝=南房総市川上

【写真説明】赤滝の様相を見せる中滝=同

09年8月17日 8,167
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