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美しく流れ落ちる二部の不動滝

[第8回] 二部の不動滝(南房総市二部)

富山直下に信仰の秘滝

これで外野不動滝、川上の大滝、井野の滝の沢と富山地区の滝めぐりをしたわけだが、同地区の滝はこれで終わりではない。主要地方道鴨川富山線沿いに、もうひとつ秘滝がある。

井野バス停から県道を西へ。森ヶ谷橋の手前に、南側へ入るコンクリート道がある。しばらく行くと左へ上る支道があるので、ここを左へ折れる。突き当たりにある小さな建物が「二部の不動堂」である。正確には荒澤山(こうたくさん)不動堂。神仏混淆(こんこう)の名残をとどめ、石宮は修験道のものという。

クルマでも入れるが、道が傷んでおり、道幅も狭く危険なのでどこか別のところへ止め、歩いた方が無難だ。

不動堂の左手に苔むした手水鉢や大正9年の銘のある石灯篭がある。この不動堂の裏に、小さいながらも見事な落下を見せる滝がある。よくぞ、こんな場所に滝があるものだと感心する。

高さは15bほどだろうか。黒い岩肌を逆「くの字」型に折れて、一条の白い流れが落下する。岩を伝わるナメ滝である。水量は少ないがその姿は美しい。地元の人しか知らない秘滝だ。滝の直下、右側に苔むした大きな石宮がある。修験道の薫りが漂う。歴史を感じさせる風格である。

地元があつく信仰する不動堂

地元の人の話によると、不動様の信仰はあつく、毎年10月28日を縁日として、二部の上集落の人たちが堂に集う。滝の上流に昭和30年代に簡易水道の取水施設ができて、水量はずいぶん減ってしまったという。滝上を堰き止め、余水吐けがこの滝を落下する。水は牛舎などの雑用水として現在も使用されている。堰き止める前はすごい水量で落下していたらしい。惜しむらくは上流の変化だが、人の営みゆえ仕方ないことだ。

2万5000分の1地図にも滝記号はなく、住宅地図にも不動堂の表記があるだけだ。滝関連の文献にも記載はなく、地元の人だけが知っている滝である。

名峰・富山の直下に位置し、川は岩井川の支流だ。雨上がりでないと、水量は非常に少ないことを申し添えておく。

この滝は比較的見物しやすい場所にあるが、地元の信仰の場でもあり、地元の水源でもある。そっと見守っていきたい秘滝である。

【写真説明】美しく流れ落ちる二部の不動滝=南房総市二部

【写真説明】地元があつく信仰する不動堂=同

09年8月29日 7,573
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