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海食崖に落ちる大房不動滝=南房総市富浦町多田良

[第12回]大房不動滝(南房総市富浦町多田良)

公園の岬にある人工滝

「自然の滝」として、この滝を本連載で取り上げるかどうか、遅疑逡巡した。国土地理院が滝の定義を「流水が急激に落下する場所」としているのは、7月26日付「B宮田の滝」で記載したとおり。そういう意味では、この滝も流水が急激に落下しているのだが、流れのほぼ100%が人工なのだ。ことごとく人の手が入り、自然の滝ではない。が、古い信仰も息づく滝なので、富浦地区代表として寂名瀑の一角に滑り込ませたい。

大正15年の安房郡誌はこの滝を「大武崎滝(たいぶさたき)」として取り上げている。かつては滝近くに滝淵山竜善院という寺院が置かれたことを思うと、不動滝として立派な信仰の対象だったのだ。

大房岬は平成7年、県の公園化事業で、現在のような自然公園に生まれ変わった。芝生園地も整備され、この滝も人手が加えられて、現在の姿になった。この是非も問われようが、公園化されなければ、大房岬そのものがやぶ山のままだったはずだ。この滝もやぶに埋もれて人目を見ることもなかったろう。

滝は2代目の竜頭から滴り落ちる=同

岬の南西側にある南芝生園地を下って、管理された緑の上を歩く。奥まった部分右手に落差6bほどの小さな糸滝がある。取材日は雨上がりで、二股の糸滝だった。左股は岩のすき間を、右股は竜頭の口から流れ落ちる。

上流の流れが人工河川を通り、この滝の上で遊歩道をくぐる。その先で塩ビ管に導かれ、竜頭に流れ込むのだ。この竜頭は先代が壊れてしまい、現在は2代目。先代の竜頭は多田良の滝淵神社に安置されている。

滝つぼは円形で浅く、その下は人工河川となってやぶの中へ。滝下にはいくつかの石宮があって、かつての信仰を偲ばせる。川はやぶの中を走り、この先の崖で海に流れ込む。現在はやぶが覆っていて、海食崖の流れは確認できない。

上流の集水施設からの流れ、滝の上下、竜頭の設置まで、すべてが人工であるが、滝が滑り落ちる海食崖は昔からの手付かずである。この岬が軍事用に使われたのを受け、竜善院は国道沿いに移され、現在の滝淵神社となる。岬とはいえ立派な寺院があって栄えた場所である。往時を偲んで滝を観賞するのもいいだろう。

クルマは、岬の公共駐車場に置く。岬を歩きながら、滝も楽しめる。小さくても滝は滝である。

【写真説明】海食崖に落ちる大房不動滝=南房総市富浦町多田良

【写真説明】滝は2代目の竜頭から滴り落ちる=同

09年9月28日 9,251
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