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切り立った渓谷を滝へ遡行する=館山市畑

[第15回]どうめの滝(館山市畑)

新幹線岩″ロ立つ奇滝

館山市と旧白浜町・旧千倉町の境である、房州南部の丘陵部は複雑な地形をなし、水豊かな地帯である。この山地は分水嶺でもあり、館山湾側は汐入川の源流部、太平洋側は長尾川の源流部となる。川筋も複雑に入り組み、流れはいくつも分岐・合流する。

この地域に人知れず立派な滝があることを教えてくれたのは「三芳の滝人間」こと、川崎一さんである。川崎さんはすでに実測調査を終えており、現地案内も買って出てくれた。どうめの滝は、滝関連のホームページや書物にも扱われていない、知る人ぞ知る奇滝である。

冒頭断っておくが、この滝を見物するには民家の庭先を通らなくてはならない。一般の見物は遠慮したほうがよさそうだ。今回は民家の主に断ってからの滝見である。

畑地区の中心部、旧畑小学校跡地の北側を瑞龍院側に折れて、小さな流れを橋で越える。この流れが長尾川で、周辺が源流域だ。橋を越えた先が、加藤カズさん(76)方。ここで生まれ育った加藤さんに川の様子を聞いた。加藤さんの庭下を清流が流れ、ウグイやウナギもたくさんいた。川の先にあることから、加藤さんの屋号は「川崎」という。

初代新幹線のノーズを思わせるどうめの滝=同

加藤さんの家を右に見て、左に瑞龍院を過ぎる。この先に民家があって、家主に断って庭先を歩いた。しばらく行くと墓場があって、この先の竹やぶを下りていく。周辺では唯一川底に下りられる場所だが、民地のうえ危険な下りなので、近づかないほうが無難だ。

ようやく川底に下りると、ここが高塚山側からの流れと畑側の流れの合流点。2つの川筋はひとつになり、白浜方面へ下る。この合流点から右手へ川を遡行していく。

長尾川上流は特徴的な姿をしている。両岸が鋭く切り立ち、川底は岩盤でゴロタ石は少ない。ごみがまったくなく、清流中の清流であることを示している。

足元に注意しながら合流点から100bほど遡行すると、流れに沿って左へ曲がった岩壁がある。ごうごうと音を立てて落水している。ここがどうめの滝である。岩壁の直下は丸くて深い滝つぼで、その左に奇岩に落ちる滝が鎮座する。

初代新幹線(0系)のノーズ部分のような岩があり、この上から清流が広がり落ちるのである。取材日は雨上がりで、ノーズの表面を豊富な量の水が流れていた。このノーズを右手へ回ると、岩を穿ってさらに小さな流れがある。長尾川は果てしない年月をかけてこの岩を穿ち、こんな奇滝をつくり出したのだ。これぞ時間と自然の芸術である。

川をそのまま下って、来た道を戻る。両側が切り立った崖で、底は岩盤。いつかこの川を河口から遡上してみたいものである。

川崎さんの測量によると、落差は5bほど。新幹線岩≠ェ際立つ奇滝である。どうめは「百目」ではなく、瑞龍院の前にあることから「堂前」ではないだろうか。

【写真説明】切り立った渓谷を滝へ遡行する=館山市畑

【写真説明】初代新幹線のノーズを思わせるどうめの滝=同

09年10月19日 14,474
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