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斜めの地層が美しい大地作の滝と山川さん=館山市畑

大地作の滝★おおじさくのたき★(館山市畑)

基幹農道にもうひとつ滝

水ぬるむ季節。春の特別編をもう1編お届けしよう。

読者はありがたいもので、4月24日付「菅田の滝」を読んだ地元の人が「同じ基幹農道沿いに、もうひとつ滝があります」と教えてくれた。土曜、日曜に開店する沿道にある直売所「せせらぎ」のすぐ近くという。

新道へクルマを走らせた。道は館山市からいったん南房総市千倉町に入り、ふたたび館山市域となる。ここが畑地区で、センリョウの一大産地である。この道が開通した後、畑地区の農業、山川國雄さん(63)は沿道で直売所を開いた。近くの川の流れから「せせらぎ」と命名した。

その山川さんに案内してもらった。滝は山川さんの直売所の裏手にある。九重方面から来ると、直売所を正面に見て左手前を畑集落へ入る旧道がある。ここに架かる橋の直下に、小さめだが姿の美しい滝がある。

川は白浜で太平洋に注ぐ長尾川の源流部にあたる。川は畑集落で合流し、新幹線の姿に似た「どうめの滝」に流れる。川は以前、この場所で曲がっていたが、川回しをして現在の姿になった。橋の上流側は人工の堰になっていて、これを「のなの堰」と呼ぶ。下流側が小さなコンクリート堰堤になっていて、ここに羽目板がある。水田に水が必要な場合は、この羽目板で水を蓄え、左岸側の水路に流す。羽目板を越えた余水が橋の下から滝となって落下している。

土日に開く直売所「せせらぎ」=同

下流側に下りると、手づくりの「滝見所」の看板。丸太のベンチもあって、ここから滝を見下ろすことができる。だが、房州滝見隊としては、やはり滝下まで下りなくてはつまらない。

山川さんが「これから整備する予定」という土手を慎重に下りると、滝つぼになる。滝の規模に比べれば大きくて広い。上流側に黒い岩肌があり、ここを伝わるように流水がある。高さは6bほどか。水の一部は地層に沿って流れ、左に広がり気味に滝つぼに落ちる。源流部のため水量が少なく、雨上がりでも豪快な姿ではない。だが房州寂名瀑としては標準的なサイズだろう。

滝を正面から見ると、岩肌に右上から左下に向かって斜めに地層が走る。小松寺上流の「新乙王の滝」の地層のように褶曲(しゅうきょく)している。この滝の白浜側には地層の美しさがわかる「白浜巨大乱堆積層露頭」があるが、この辺一帯は太古の昔は海だったのだろう。この滝の地層の美しい褶曲を眺めると、そう感じずにはいられない。

山川さんによると、この地の小字を「大地作」という。早口の房州弁では「おーずり」と発音するそうだ。地元の人は新道ができて、下流側から見られるようになり、滝の全容が確認できたという。かつての子どもは滝つぼで遊んだというが「滝というと、華厳の滝のイメージ。これが滝だとは認識していなかった」と話す。直売所の人たちは「せせらぎ滝」というが、小字をつける滝名の慣例からいくと、大地作の滝だろう。

近くにはオタマジャクシの住む「観察池」もある。

直売所は土日のみオープン。地元の農産物を買い、地元の人と語らい、滝を観賞する。そんな週末もまた楽しい。

【写真説明】斜めの地層が美しい大地作の滝と山川さん=館山市畑

【写真説明】土日に開く直売所「せせらぎ」=同

10年5月14日 8,239
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