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2段になって落ちる柱木牧の滝

[第4回] 柱木牧の滝(はしらぎまきのたき,南房総市珠師ヶ谷)

温石川源流部の秘滝

旧丸山町には、丸山川と温石(おんじゃく)川の2本の2級河川が、南北を縦断して流れている。温石とは、暖を取るために懐に入れて温めた石のことで、その昔、この川がそうした石の産地であったため、温石川となったという。

インターネット上では、この温石川の上流部に2つの滝があるという情報があるが、一部事実誤認がある。地元の農業、佐久間和夫さん(67)に案内してもらった。地元紙としては、やはり正確な情報を残さなければならないからだ。

ネット上の「温石川の川廻し滝」は、川廻ししたトンネルが崩落してしまい、現在は元の川筋に戻している。ネット上ではいつまでも川廻し滝が存在しているが、川筋は元に戻り、すでに滝は存在しない。

その元川廻し箇所の上流にあるのが、今回紹介する柱木牧の滝である。同じくネット上では「大谷の滝」となっているが、滝の所在地は小字「大谷」ではなく、「柱木牧」である。

佐久間さんは、滝の名で「大谷」は聞いたことがないという。ここでは現地の小字をとってみる。

珠師ヶ谷と石堂原を結ぶ市道の切割の南側に、温石川に沿って北上する大沢林道がある。少々荒れてはいるが、軽トラックならば通行可能だ。もっとも、林道は林業者のための道なので、その点を注意されたい。

鉱区が設定されたこともある源泉

500bほどで、皆倉との分岐点になるが、ここを道なりに直進する。いくつか橋で川を渡ると「大遠見(おおどおみ)橋」がある。ここが本流の分岐点で、左股の支流に沿って、未舗装の道がある。草が伸びていて、非常に歩き難い。

5分ほどこの道を歩くと、小さな瀑布帯が現れる。この上に目指す滝がある。滝は左股の支流から落差8bほどで落下している。上流は細い流れだが、ここで2段になって落ちて、小さな滝つぼを形成する。幅は最大部で3bほど。黒い岩肌に白い流れが落ちる。すぐ上は、丸山地区の低名山・経塚山(標高310・7b)。温石川の源流部にあたる。

この滝は支流型で、本流は右股である。ここをさらに遡行すると、やがて強い硫黄臭が漂う。小さな滝を上ると、右岸に白い硫黄の流れがあった。

佐久間さんによると、かつて珠師ヶ谷区がこの硫黄を利用しようと、鉱区を設定。塩ビ管でドラム缶に集積し、これを集落の人が利用していた。源泉中の源泉である。

が、その設備も古くなり、やがて誰もこの源泉を利用しなくなった。滝を訪れる人も減り、現在は滝までの道も草に埋もれている。

柱木牧とは、江戸時代の嶺岡五大牧のひとつ。経塚山の直下には、市指定史跡の馬捕場跡もあり、当時の石積みも残る。滝の存在とともに、歴史を感じさせる場所である。

【写真説明】2段になって落ちる柱木牧の滝=南房総市珠師ヶ谷

【写真説明】鉱区が設定されたこともある源泉=同

10年7月17日 10,967
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