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硬い岩場を滑るように落ちる=同

[第6回] 荒川の滝(あらかわのたき,南房総市荒川)

胸が高鳴る小さな面滝

地理的には本連載の前編で扱うべき位置にある滝だが、それもこれも、その存在が人知れず、知名度の低い滝だからである。正式名称はなく、地元でも特に呼び名はないというから、大字をとって、荒川の滝としよう。

主要地方道鴨川富山線の平久里中のガソリンスタンド地先の丁字路を北へ向かう路線が、市道平群大山線である。上り勾配の道を行くと、左に大きな採石場が出る。この場所が大字界で平久里中と荒川の境である。採石場の先に市道と川が並行して流れる場所があり、市道下にこの滝がある。

川は2級河川・平久里川の支流、荒川。この滝の上下域はケンチブロックの護岸や、砂防ダムなどがあるが、この滝だけは自然のまま手つかずである。外野の不動滝前後と同様、河川管理者が配慮したのだろう。

降りる道などないので、市道から無理やり川へ降りる。立木につかまりながらだから、少々危険である。慎重に岩を下っていくと、幅広の面滝に出合う。取材日は雨上がりで、豪快に広がる姿だった。幅は6b、落差は5bほどだ。それほど大きくはないが、しっかりとした流れの滝である。

広がって流れる荒川の滝=南房総市荒川

面滝だから、水は幾条にもなって広がって流れる。正面に大きな岩があって、流れはこの左右に広がる。特徴的なのはこの岩が非常に硬いことである。玄武岩なのだろうか、房州には珍しい硬さで少々の激流ではびくともしそうもない。

注意しながら岩を渡り、下流側に出る。下流から低いアングルで三脚を設定し、カメラを据える。豪快な流れである。大きな滝ではないが、心が洗われるような美滝である。

この滝の北西側に尾根が続き、西側の外野川との分水嶺になっている。西側は外野川で外野の七滝を抱える。東側は荒川で、荒川の滝を含有するのである。

房州の流れは小さいが、いくつもの滝を抱えて、海へ注ぐ。小さな滝の発見はまた、小さな胸の高鳴りでもある。素晴らしきかな、房州寂名瀑。

【写真説明】広がって流れる荒川の滝=南房総市荒川

【写真説明】硬い岩場を滑るように落ちる=同

10年7月31日 7,381
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