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中段の岩で二手に分かれる合戸の滝

[第7回] 合戸の滝(ごうどのたき, 南房総市合戸)

未知な存在の季節滝

山仲間というのはありがたいもので、時折、貴重な情報をくれる。この滝もこれまではあまり知られていなかった季節滝≠ナあるが、山仲間が「立派な滝になってるよ」と教えてくれたので、三脚を積んでマイカーで向かった。

南総里見八犬伝の地、富山(とみさん)。伏姫が犬の八房とともに籠もったとされる籠穴が富山南麓にある。旧富山町によってこの籠穴の下に公衆トイレが設置され、富山登山ルートのひとつとなっている。

山仲間は富山中学校から登るこのルートを歩いていて、滝を目にしたという。

合戸堰は富山南麓にある細い川を堰き止めた農業用堰。この川は大川の源流部で、岩井川の支流である。歴史ある古い堰で、合戸地区のため池だ。

堰は田植えの時期に放水され、中学前を通って田に向かう。一部はパイプラインとなって県道方面に流れるという。堰の水を落とした際、この崖面で大きな滝となって落ちていく。

伝説の伏姫籠穴

取材は4月の冷たい雨の日。林道が大きく右カーブする手前で、砂防工事が行われていた。滝の右手を改良し、土石流を防止しているようだ。

林道の縁に立って、この季節滝を眺める。高さは20bほど。堰の出口から垂直落下し、中段の岩で二手に分かれる。水はそのまま川になって、農業用水となる。

地元の人に取材したら、堰の上流で川は二股になって、ここにも小さな滝があるという。かつては地元の簡易水道として使われていた。下の堰が完成した後は、この上流滝に行く道はなくなり、それこそ幻の滝という。いまとなってはゴムボートで行くしか手はないだろう。

南麓の公衆トイレ

この富山登山ルートは、かつて何度も歩いた道。冬の枯れ野を楽しみ、新緑を愛で、秋の紅葉を満喫する。そんな風に何度も歩いているのだが、この滝を見たのはこれが初めてだった。

四季を通じて放流される訳ではなく、雨上がり後でもいつでも見られるという滝ではない。それだけに、この撮影ができたことがうれしい。水利は人に役立てるためのもの。田のシーズンの一部に発生する。それも房州寂名瀑らしくていい。

【写真説明】中段の岩で二手に分かれる合戸の滝=南房総市合戸

【写真説明】伝説の伏姫籠穴=同

【写真説明】南麓の公衆トイレ=同

10年8月7日 8,890
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