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豪快に流れ落ちる山田の滝

[第8回] 山田の滝(やまだのたき,鋸南町下佐久間)

消滅説打ち消す豪快滝

南房総市平群地区の大字・山田の大谷川上流の滝群に消滅説があるのと同じように、この山田の滝も消滅説がもっぱらだった。今回、その消滅説に立ち向かうべく、地元の人に案内してもらった。

山田は下佐久間の小字。嶺岡山系の西端に位置する山間である。最近では隣接する山が、採石事業で姿を変え、滝は消滅したとされている。山田の堰に流れ込む滝が消滅したのは、堰のかさ上げ工事で水面が上昇したことも理由のひとつだろう。その代わり、堰の余水吐けに豪快な滝が出現する。地元の人に「これを山田の滝としても良かろうか」と問えば、「元々は同じ川筋にあった滝。余水吐けが山田の滝でしょう」との返事である。

山田の堰は、近いようで遠い。堰の上流まで行く道は荒れてしまって、やぶこぎをするような険しい道だった。それでも川崎勝丸さん、地元の2人でやぶをこぐ。ひたすらこぐ。耕作放棄地をいくつも越えると、そこが滝のあった場所だった。上流側は3面をコンクリートで固められた川。ここに滑り落ちるような滝があったが、湖面が上昇してしまい、滝の姿はない。

かつての上流域であろう採石場に出る滝

堰堤には嶺岡中央林道3号線から行けるが、地すべりで道が切断され、クルマでは行けない。歩いてたどりつくと、堰堤に3つの石碑があった。大きめの「樋口改良記念碑」が明治42年のもの、おなじく小さなそれが昭和28年のもの。一番大きくもっとも新しいのが県営ため池工事完成碑で、平成9年の文字。この平成9年の大がかりな改修で、堰がかさ上げされ、滝が消滅してしまったらしい。

下流側に歩いて回る。一部人工的な川だが、この滝の部分だけは岩肌が美しく、美滝が出現している。高さは6b、最大幅は3bほど。上段の3条の流れは中央部で合流し、末広がりになって落ちる。雨上がりで豪快な姿を見せている。堰の放出側なので多分に人工的な要素がある。右岸はケンチブロックで固められ、川底はコンクリート。それでも滝は岩の部分をなめるように落ちていく。

堰を落ちた水は、山田川となり、鋸南富山インターチェンジ付近で、佐久間川に合流する。

上流の滝は消えたが、下流側に立派な滝がある。この滝は堰改修にも無関係なはずで、明治42年からここを流れていたに違いない。農業用堰で明治に完成していたものは珍しいといい、歴史的に価値のある滝だろう。

採石場には、大雨が降ると美しい滝が出現する。この流れが元々の山田の滝と関連があるかは、根拠がない部分である。

上流側も危険だし、滝の部分も草が多い。人を近寄らせる要素も少ない。消滅滝として扱われてむべなるかな、である。

【写真説明】豪快に流れ落ちる山田の滝=鋸南町下佐久間

【写真説明】かつての上流域であろう採石場に出る滝=同

10年8月14日 9,385
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