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丸木橋から落ちる下貫沢の滝の上

[第9回] 下貫沢の滝(しもぬきざわのたき, 鋸南町小保田)

急峻な郡界尾根に潜む滝

房総半島南部を東西に貫く長狭街道沿いにある小保田集落は、急峻な郡界尾根が迫る急傾斜地にある。スイセンの名所で名高い、郡界尾根の一員・嵯峨山(標高315・5b)の西に端を発し、小向川となって下る流れに、この滝はある。小向川は小保田集落で保田川に合流、東京湾へと流れる。

急傾斜な場所だけに、川の勾配もきつく、水量はそれほど多くない。干天が続けば沢は涸れてしまうだろう。取材は雨が降り続く中、雨具を着ての強行軍である。

長狭街道から嵯峨山への標識に従って、山へ登る。雨の中、さすがにきつい上りだが、山頂まで行くわけではないので、ぐっとこらえる。一般の人にはこの滝見は困難だろう。山の中腹に張り付くような滝なのだ。

沢沿いの登山道を歩く。イノシシの掘り起こした跡がひどく、耕作放棄地も増えている。このありさまでは、仕方がないことだろう。山頂への分岐点を左に折れ、泥道を下る。5分ほどで沢音が聞こえてくる。小向川の源流部だ。

泥の道には5本組みの丸木橋が架けられている。長さは2・5bほどか。この丸木橋の下を流れる長い沢が、目指す滝だった。

中段域も急な岩を滑り落ちる

橋を起点に上流側は2段の流れで、滝つぼもある。この落差が8bほど。橋の下はS字に曲がるように岩肌を水が流れる。岩は黒く光り、この山中で存在感を放つ。橋から滝下までは20bほど。従って全部で28bほどの巨大な滝である。山中に竜がのたくったように流れる。近くの民家に人は住まず、滝音だけが静かな山里に響く。

泥道から右岸側を無理やり降りていく。小さな潅木につかまりながら。

雨が落ちる中、非常に危険である。慎重に足を運び、滝の中段へ出る。ここから見上げるようにカメラを構え、滝の上部を撮影する。もっと下に降りてあおるように撮れば迫力満点なのだろうが、いかんせん、この岩肌ではこれが限界である。

泥道に上がり、上から滝全体を眺める。郡界尾根は水を集め、この沢を下っていく。急な勾配は滝の沢となって保田川へ合流していくのだ。

農地の縁を通って、民家裏へ出る。ここに東電の「内房線110号」の高圧線鉄塔がある。この電線は郡界尾根を越えて、上総と安房を結んでいるのだ。

コンクリート道を下って、クルマへ戻る。滝の取材に雨はつきもの。雨もまた楽し、である。

【写真説明】丸木橋から落ちる下貫沢の滝の上段=鋸南町小保田

【写真説明】中段域も急な岩を滑り落ちる=同

10年8月21日 8,507
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